梅雨って、じめじめしてて気分もなんだか落ち込むよなあ。
と、誰かが話しているのを聞くたびに、ちょっぴり寂しい気分になっていた。

自分が生まれた時期だから。という理由から、えこひいきいしてしいまうのかもしれないけど。
梅雨だって、捨てたもんじゃ、ないよ?と、反論したくなってしまう。

厳しい冬をじっと耐えて、やわらかな春を迎えてほっと一息ついて。
エネルギッシュな夏を迎えるために、鬱々と静かに力を貯めている。

水田に水が入り、実りの季節に備え。
山々は、たっぷり降り注いだ雨を蓄える。
火照りすぎた大地を、優しく雨が冷やしてくれる。

そりゃ、外出に傘がいるだとか。
一日中なんだか暗いだとか。
洗濯モノが乾かないだとか。

色々、人間にとってはうれしいことばかりじゃないけれど。


・・・ほら。雨の匂いがしてきた。

カーテンを揺らす風が、ふわっとひんやりとした空気を運んでくる。

「・・・おっ。雨になるかな?」

隣でくつろいでいた大ちゃんが、おれを腕の中にだきしめながらつぶやく。

「・・・だね。」
「昨日洗濯終らせてて正解だったなあ。」
「ほんと。今日はお出かけもしないしね。」

ここのところ、舞台の稽古続きですれ違いがちだったけど。
梅雨だからこそ、おうちでまったりする時間が増えた。

「なーんか、いつも6月って忙しい気がする・・・。」
「言われてみれば、そうかもな。」

毎年おれの誕生日に完全オフ、なんてことがあったためしがないのだ。

「自分を振り返れ、ってことかな?」

この世界に身をおかせてもらっている自覚をもち、原点をみつめる。
その世界を離れてでも、やりたかったことを胸を張り頑張れているか。

生まれてきた意味。
大ちゃんとめぐり合えた意味。
いま、ここに存在している意味。

「・・・もう、24歳になるんだもんね。」
「そーだなあ。出会ったころはまだまだ子供だったのにな。」

「そういうこと言うから、おじさん臭い、って言われるんだよ。大ちゃんは。」
「だって事実だろう?お前も、後輩見て「若いなあ。」って最近思わないか?」
「・・・・うん。確かに。」

いつの間にか、遠い憧れだった大ちゃんの背中に追いつく年齢になっていた。

部長だった大ちゃんにちゃんと追いつけているだろうか?
・・・まだまだ自分のことで精一杯で、目の前しか見えていないのではないだろうか?
うんと背伸びして、がむしゃらに頑張ってきた、とは思うけれど・・・。

ちゃんと、成長できてる??

毎年年齢を重ねるたびに、大ちゃんに近づけるような気がしてうれしかった。
だけど、いよいよ肩を並べる、と思うと、歓びと焦りが入り混じった感情に包まれる。

大ちゃんは努力してます!頑張っています!
と、いうところを見せないで、さらり。となんでもこなしてしまう。
おれがうんと背伸びして小走りで後をついていくのを、悠々と構えて待っていてくれる。
自然に大人で、人生を楽しむことを知っていて無邪気に笑う。

・・・・必死に背伸びして頑張っている時点で負け、だよなあ・・・。


「・・・大ちゃん雨嫌い?」
「なんだ?突然。・・・まあ、色々うっとおしいけどな。やっぱ日本だなあ。って感じられるから、嫌いじゃないよ。」

まるごと、まるっと包み込んで受け入れてしまう懐の広さ。
おれがどんなに悩んでも、揺れても、落ち込んでも、弱さも強さも全部丸ごと包み込んで受止めてくれる安心感。

「・・・ああ。だから。」

去年の今頃は自分が決めた留学なのに、強さと弱さが混在していて。
強い決意と、将来に対する不安がまざりあっていた。

今は完全にないか。と言われれば嘘になる。

憧れ続けた大ちゃんの隣にいれることは、至上の幸福で安心できると同時に。
側に立ち続けることの責任感を背負うことになるのだから。

隣に立つかもしれなかった数々の人間のすべてを引き受けて、今、おれがここにいる。

この人を選んでよかった。
この人に選んでもらえてよかった。

それですべてが終わるわけではない。
幸せが一生続くわけではない。

相手にいくら大切に、愛されていたとしても、受け取ることを怠けるとあっと言う間にバランスが崩れてしまう。

一所懸命追いかけるからね。
いつまでも、「がんばったな。まお。」って高い頂上で手を差し伸べて待っていてね。
背伸びしている未熟なおれを、丸ごと愛してくれることに感謝してるよ。

愛。とは、きっとそういうもの。


「・・・あ。24歳になった。」
「・・・ああ。おめでとう。まお。」

隣に座ったまま、重なり合った手を握り締めると、ふわり。と優しいキスが降ってきた。


「・・・ありがと。今年も、側にいてくれて。」


目を閉じれば、優しいぬくもり。

去年よりも、君が好き。


きっと、重ねた年月の分だけ愛が深まったから。


さあ。一歩を踏み出そう。


いつでも、一秒前の自分に胸を張って生きれるように。


命を、刻もう。




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ぱぱーっと考えたお話でごめんなさいWW
大まお。というよりも、。。。だけど、ある程度年齢を重ねてくると、「おめでとーっ!」だけじゃない深みみたいなものって出てくると思うんですよね^^

ほら、二人とも基本真面目だし(笑)

ぱーっ!!とした華やかなおめでとーっ!は散々友人に祝ってもらっているだろうから。
二人きりのときは、こんなふうに静かに穏やかにすごしているんじゃないかなあ?と思います^^

・・・去年のBD話発掘しました(笑)
そこまで恥ずかしくはなかったけど、やっぱり甘いなあ。
ワールドカップだったんだねW