じっと考え込むように沈黙が流れる。

大ちゃんの伝えたかったことは、ちゃんと受止めたよ?
その上で出したぼくなりの答え。

・・・ちゃんと、伝わっただろうか?

言葉にするのが本当に下手くそでもどかしい。
大ちゃんのように理論整然と、納得できるような話方ができたらいいのに。

「・・・大ちゃん?・・・怒った?」
「・・・いや・・・。」

沈黙に耐えかねて、おそるおそる問いかけると、短い一言が返ってくる。

「色々と、ごめんな。」

色々、かあ・・・。
玉砕覚悟で受止めてもらうだけで十分、って思ってたけど、やっぱりちょっと辛い、かな?

「ううん。謝ることじゃないよ。やっと受止めてくれて、ありがとう。
もう、困らせないから。勝手に好きでいるぐらいは、いいよね?」

安堵したような、諦めきれないような気持ちで唇を噛み締める。

「・・・いや。ちょっと考えさせてくれ。今は頭が混乱してて・・・。」

律儀な大ちゃん。
ぼくの好き、が本気であるならば、自分も本気で向き合わないと。とか思ってくれているのだろう。
男に惚れるなんて、簡単なことじゃない。って自分で言ってたくせに。

「無理しなくていいよ?」
「・・・してないから。」

真剣に返ってくる返事に、戸惑い、喜び、苦しくなる。

・・・期待、してしまう。
大変だとわかっている道を歩んでくれるのかも?と・・・。
ぼくは好きになったほうだからいいとしても、好きになられた大ちゃんは?
それこそ、敢えてそんな道をぼくのために歩ませることになる。

伝えたい。
答えてほしいけど、答えてほしくない。

どうしてこんなにも恋というものはややこしいのだろう?

・・・タクミの言っていたことが少しだけわかった。

告白して、両思いになって、全部わかりあって。
そんな簡単なものじゃないんだよね・・・。


「・・・ありがとう。じゃあ、またお仕事でね?」
「・・・ああ。」

電話を切ると、切なさは変わらないけれど、随分と心は軽くなっていた。

勘違いだなんて、ごまかさなくてもいい。
素直に「好きだよ。」って伝えてもいい。

ぼくの中にある大切な一部分を殺さなくても、いい・・・。


結局すべて自分のため、なのか。

大ちゃんを巻き込んで混乱させて。
自分勝手なエゴイズム。


・・・ごめんね。


でも、こうでもしなきゃ壊れそうだった。

受止めてくれて、本当にありがとう・・・。