自覚してしまうと、いてもたってもいられなくて。
でも、大ちゃんのスケジュールがわかんないから、悶々と一人で悩んで。

それでも、やっぱり伝えたくて。

<話したいことがあるんだけど>

すぐには、返事が返ってこない。
お仕事だろうか?それとも、外出していて気がつかないんだろうか?
それとも、嫌われたんだろうか?

秒針を刻む時計の音がやけに大きく感じる。
握り締めていた携帯が、すっかりぬくくなってしまった頃に、メール受信のランプが灯る。

<返事遅くなってごめん。怒らせたかと思ってたから、連絡くれて嬉しかった>

・・・怒らせた?
ああ。そうだった。
大ちゃんの話も聞かないで、一方的に「馬鹿っ!」と罵って逃げ出したんだった。
そんなこと、すっかり忘れていた。

<こっちこそ、ごめんなさい。今、話しても大丈夫?>

どきどきしながら返信を待っていると、すぐに着信音が鳴って、心臓が飛び出るほどびっくりした。

<・・・もしもしっ!?大ちゃんっ!?>

慌てて出たせいで、声が裏返ってしまった。

<そんな焦らなくても。変な声>

電話の向こうで、クスクスと笑っている。
ガチガチに緊張していた気持ちが、ほろほろとほどける。
親身にぼくのためを思って言ってくれたのに、酷い言葉を投げつけた。
なのに、以前と何一つ変わらない大ちゃんのでっかさに涙が出そうになる。

<大ちゃん。あのね。>
<・・・ん?>

何を聞いてたんだ?と怒られるかもしれない。
でも、どんなに頑張っても消えない気持ち、というものがある、ってゆーことを知ってほしい。

<やっぱり、大ちゃんのこと、好きだよ・・・>

ふっと、笑うような気配が感じられて、ごくりと唾を飲む。
カサカサに乾いた唇をぺろりと舐めて、ゆらぎない言葉を紡ぐ。

<恋人を演じたから好きになったんじゃないよ?
そりゃ、意識するきっかけにはなったかもしれないけど。
部長だと思ってたころから、憧れてて、大ちゃんみたいになりたい。って思ってたし。
・・・女の子とも、付き合ってみたけど、大ちゃんといるときみたいなドキドキは感じなかった>

きっと、ぼくはまた大ちゃんを困らせている。
でも、ちゃんと知っていて欲しい。
ぼくが、彼に恋をした、ってことを。

<・・・。あのさ。まお。17歳から見たら、俺なんて大人で当たり前だぞ?
たまたまこの世界に入って最初に関わったから、凄い!って尊敬しちゃってるのかしれないけど。
多分、お前が同世代だったらまた感じ方は違ったと思う・・・>

ぼくが、傷つかないように言葉を選びながら、迷いながら話してくれてるのがわかる。
・・・でも、ぼくが欲しいのはこの優しさじゃない。
守ってもらうメンバーの一員でいたいわけじゃない。

<それって、大人だから好きになったみたいじゃない。
だったら、先生とかにも恋しないとおかしいでしょ?
・・・大ちゃんの大人っぽいところも、ふざけたりして子供っぽいところも大好きだよ?
理屈なんてわかんないけど。
とにかく、全部尊敬できて、一緒にいると、ドキドキするの!>

なかなか突破できない分厚い壁が二人の間に立ちはだかっているようで、イライラする。

<・・・まおはまだ17歳だからわかんないかもしれないけど。
男に惚れるなんて、簡単なことじゃない。映画の中みたいに綺麗ごとだけじゃない。
多分、損したり傷つくことのほうが多いんだぞ・・・?
そんな道をわざわざ選ばなくても、お前ならまだたくさん・・・>

ほら。また、まおのためを思って。だ。

<もう、十分わかったよ。大ちゃんがどんなにぼくのことを心配してくれてるのかは。
ぼくが聞きたいのはそんなことじゃない。
好きになってほしい。とも言ってない。
・・・ただ、ぼくが大ちゃんのことを好きだって気持ちを認めてほしいだけ、なんだ・・・>