最近夜になると、少し肌寒く感じる。

夏の間は、溶けて形がなくなってしまったように感じられる日もあったけれど。
去年の今頃は・・。と、考えずにいられない。

毎日テニミュの稽古で会って、虹色の撮影で大ちゃんの腕の中にいた。
人肌に触れることのなかったぼくには、人肌恋しい季節。という言葉が去年までは実感としてなかったけれど。

今なら、わかる。

・・・抱き締めて、ほしい。
「冷え性だなあ。お前。」って、手のひらを包んでほしい。
「がんばったな。」って頭をなでてほしい。

「・・・会えないから、おかしくなるんだ。」

木の上の葡萄が酸っぱいとわかっていても、手が届かないからこ美味しそうに見えるのと一緒で。
会えないから、どんどん楽しかった思い出ばかりが美化されていって、どんどん好きになる。

・・・好き。

そう、好き。なんだ。
トクベツ扱いしてほしいのも、人肌恋しくなるのも。
なんだか知らない感情にがんじがらめになって、なにひとつ思い通りにいかない気がするのも。

今まで努力すれば、どんなこともなんとかなる。と思っていた。
実際、学校のことにしても、舞台のことにしても、頑張ればちゃんとクリアできた。

でも、この感情ばっかりは。
自分が努力してもゴールが見えない。
先にすすんでいるのか、後戻りしているのかさえ、わからない。


<・・・浜尾君?今度、虹色の続編を作ることになったんですって!>
<・・・ほんとですか?>

マネージャーさんの声に、胸がどきどきする。
頭の中が大ちゃんと演じたシーンでいっぱいになる。

<・・・あ。でも、キャストは・・・?>
<もちろん、渡辺君とよ。監督も前回に引き続き、横井監督。
虹色の評価がとってもよかったから、是非。ってことになったみたいよ>
<・・・ほんとですか?>

嬉しい。
大ちゃんと精一杯演じたあの作品がそんなふうに評価されていたなんて。

・・・また、ギイとタクミになれるなんて。


・・・ねえ?大ちゃん喜んでくれてる?
・・・それとも、一回きりだったから、できたんだ。

とか、思ってる・・・???


ぐるぐると思考がめぐる。


「・・・やっぱ、会おう!」

こんな苦しい一方通行のまま、何もなかったようにギイとタクミには戻れない。

きっと、友人同士でさえ、演じられない。

伝えるだけでいい。

自分の中で押し込めてしまうから、すうすうするだけだったものが、
危険なほどに大きな渦になってしまったんだ。