フレッシュなうちに、文字にしておこうと思います^^
くるかおちゃんが、そのうちイラストをUPしてくれるかなあ??

二人で、命日からイメージするイラストを描いていたのですが、
くるかおちゃんのイラストは、もんのすごく物語を感じるイラストだったのです^^




----------------------------------------------------------




静かに雨が降る。

シトシト。
シトシト。

あの日の思い出ごと包み込むような、静かでやわらかい雨。

兄さんがぼくを包み込むように、
霧雨のような雨が、じんわりと肩を濡らしてゆく。


「・・・だたいま。久しぶり。」

雨に濡れて、ひっそりと息をしている兄の墓前に手を合せる。

艶やかに濡れる紫陽花の花花に囲まれて、安らかに眠っている。


ぼくの思い出の中にある、白い百合に囲まれた棺の中の兄さんは、
すっかり紫陽花の側で眠る兄さんというイメージに変わっていた。


パサリ。

冷たい墓石の上に、セロファンの擦れる音が響く。

この瞬間だけは、何度訪れても、涙がでそうになる。


「・・・ねえ?兄さん。今年は、ギイがいないんだよ・・・。」


毎年、必ずお前とここにくる。

そう約束してくれたのに。


もし、兄さんが生きてくれていたならば。
きっと、思いっきり優しかった胸に顔をうずめて泣きじゃくっただろう。


ぼくは、一人じゃない。


ギイがくれたたくさんの宝物。
閉ざしていた心をゆるゆると溶かして、人の優しさを教えてくれた。


・・・だけど。やっぱり。


どんなに信頼できる仲間ができたとしても。
ギイの存在は、ぼくの周りにある宝物を全部集めたとしても、足りることはない。


墓石に撥ねる雨を、じっと眺める。

静かに眠る兄さんと、ただ見詰めることしかできないぼくを包み込む、
雨の音に耳を傾ける。

雨のにおいは、何よりもギイを思い出させる。


今年の雨は、冷たい。


はあっ。と手のひらに息を吹きかけると、ふっと影がよぎった。


「・・・?」

「遅くなってごめんな。タクミ。」

「・・・ギイっ!!」


ぱあっ!とあたりが金色に輝いたように明るくなった。

会いたかった!会いたかった!!会いたかった!!!


大声で叫びたいのに、声にならない。

心が、震える。


ぎゅうっ!としがみつくように抱きつくと、懐かしいギイの香りがした。


「・・・もう、無理だと思ってた・・・。」

「信用ないなあ。俺。約束しただろ?毎年、お前とここに来る、って・・・。」


「だって・・・。だって・・・。」


言葉にできない言葉を全部受けとめてくれるように、頭をなでてくれる。


「泣くなよ。タクミ。」

「・・・泣いてなんか、ない。」

頬を伝うのは、雨なんだから。

ひとりでも、ちゃんと、ここに来れたのだから。


ギイのくれた宝物。

大切にずっと持っていたよ。


兄との思い出に向きあう強さ。

・・・・でも、やっぱり、一緒にいてほしい。


ギイの胸に顔をうずめながら、心が凪いでゆくのを感じる。


「よかったな。タクミ。」


後ろから、兄さんの優しい声が聞こえた気がした。