チャンスはあっけなくやってきた。

自分から終わりにしよう。
そんなふうに思いつめていたけれど、何も知らない大ちゃんにとっては、
何ひとつ変わっていないのだと思い知らされる。

自分の気持ちさえ、自分で決められない苦しさ。
玉砕覚悟で、好きだ!と言ってしまえる関係が羨ましい。


<昨日は、ごめんな。せっかく家まで来てくれてたのに>
<ううん、本当にたまたま近くを通りかかっただけだから>

律儀に昨日の侘びを入れてくれる大ちゃんに、大ちゃんらしいな。というほほえましさと、
忘れてほしかったのに。というざわつきが交錯する。

<あのさ。侘びと言ってはなんだけど。今夜、うちに呑みにくるか?>

こちらの機嫌を伺うような声色。
あの強引なまでの檸檬色の朝焼けのように、強力な好意でぼくを引きずってゆく。
まばゆいばかりの光の中で、ひとりぼっちだったぼくの気持ちわわかるか?
どんなに明るく照らされても、落ちてゆくしかない闇を見たことがあるか?

そういえば、いつもぼくから誘ってばかりだった。
ギブアンドテイクの罪滅ぼしでしか誘ってもらえないのか。
と、せっかくのお誘いが余計に虚しく感じる。

・・・やだな。
そんなふうに思ったことなんて、なかったのに。
ぼくが、大ちゃんのことを大好きで。
ぼくの側で、大ちゃんが嬉しそうにくつろいでくれたら、満足だったのに。

・・・見返りなんて、最初から求めてなかったのに。

自分の中でどんどん膨れ上がる嫌な感情。

どうして?どうして、ぼくだけこんなふうになってしまうんだろう。

親友という信頼を裏切って、恋に落ちてしまった罪なのだろうか?