ほんのりと空気が和らぐ春の夜。

一晩ごとに体の緊張がほどけてゆくのに、心の奥がすうすうする。
何かを忘れてきてしまったような。
満ちたちた大きな幸せに包まれているのに、チクリと切なさが胸を刺すような。

強くなりたいのに、泣きたいほど弱さをさらしてしまいたいような。
しっかりと自分の足で立ちたいのに、全てをゆだねて甘えてしまいたいような。

春。

新たな旅立ち。

その文句を聞くたびに、自分の中の矛盾に心がよじれそうになる。

しなやかな強さを持ちたい。
補強して、補強して、努力して保つ強さじゃなくて。

新しい人格を衣のようにまとう。
幾重にも重ねた衣は、わがままで頼りない自分をすっかり隠してしまったけれど。

本当は、離れたくない。ってすがりついて泣き出したいんだよ。


パラリ。パラリ。

そんな感傷に浸りながら、ページをめくる。

「・・・うっ!!」

とある一ページで、手が止まる。
片手に持っていたカップを思わず落としそうになる。

「うわっとっ!!」

大慌てでカップをテーブルに置いて、こぼしてしまったコーヒーをフキフキしていると。
一気にアドレナリン大放出して、鼻にも下半身にも血液が充満して、
あちこちいけない更に恥ずかしい液体で汚してしまいそうになって、鼻と股間を押さえる。

「・・・忘れてた・・・・。」

こんなお宝?、、、危険?な写真が存在していたということに。




「おっかえり~~。」

いつものようにお玉を片手に玄関に迎えにきてくれたまお。

「うっわあ!大ちゃん。どうしたのっ!?」

ドアを開けるなり、鼻血をボタボタっとたらし、
股間を押さえて前かがみにうずくまる俺の背中をさすりながら。まおが素っ頓狂な声をあげる。

「どうしたって、お前・・・。それ、何ぷれい・・・。」

更に血液量が増えそうで、直視できないまま問いかける。
少し、温かくなってきたとは言え。
まさか男のロマン!の裸にエプロン姿でお迎えだなんて!!

いやはや。生きててよかったあ!
メイド喫茶の「おかえりまさいませ。」を体験したい!と、ちょっとは心がぐらついたこともあったけど!
やっぱり、まおが一番だよ~~。

だが。
心の準備なしで、いきなり、というのは、大ちゃんにはちょっと刺激が強すぎるよ?

かーっと顔に血が上るのを感じながら必死で背けた背中に、まおのきょとん、とした声が響く。

「ぷれい・・・って??」

ぴらん。とエプロンをつかんで首をかしげているまおを直視できるわけもなく。

「それだよっ。それっ。裸にエプロンっ!!」

背を向けたまま、指だけでまおのエプロンを指さす。

「・・・きゃははっ!やだもうっ!裸じゃないよおっ!
ちょっと昼間暑かったから、タンクトップとハーフパンツだっただけだって!ほら!」

ほら。と、べろりん。と色気なく派手にエプロンをまくった下には・・・。
確かに、しっかり、ちゃっかり、この季節には見慣れたタンクトップとハーフパンツが・・・。

「大ちゃん・・・。これぐらいで鼻血出してたら、犯罪だよ?外出できないよ?
今時の若者のファッションなんて、みんなこんなもんだよ?」

「いや。誰かれかまわず鼻血こいてたらそりゃ変態さんだけど。
俺だって、生足生腕に興奮しているわけじゃなくて、お前だから・・・。」

ちゃんと服を着ている、とわかっても、エプロンを下ろしてしまえば
やっぱり悩殺ビジュアルにには違いなくて。

背中を向けたまま、股間の昂ぶりを押さえていると。

「もーうっ!大ちゃんのすけべえ!!」

思いっきり照れ笑いをした、これまた股間には毒な愛くるしい笑顔で背中をバシッと叩かれた。


「うっ・・・。」

衝撃で、ぽたり。と鼻血が落ちる。

「わわわっ!!大ちゃん、大丈夫っ!?」

心配顔のまおに覗き込まれながら。


・・・大ちゃん、幸せ・・・。


マヌケな格好で、幸せをかみしめるのだった。


・・・俺って、やっぱり、Mだよな??




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痛いタイトルそのままに、イタイお話です(笑)

ちょっとは浮上できたかなあ?
家庭訪問で、楽しいお話をしたからかも^^