いつも通いなれた駅からの帰り道。

満開の桜の枝を見上げていると、
どうしても家に持ち帰りたくなってポキンと手折った。

今年の開花は少し早いような気がする。

それとも、過ぎてしまえば1年とは早いものだ。
という例えそのものなのだろうか。

そうっと、そうっと、持ち帰ったのに、
ゆらゆらと揺れるたびにはらはらと花びらが舞い落ちてゆく。

去年の今頃。

自分の指の間からはらはらと零れ落ちてゆく儚さが、
あっけなく去っていってしまうまおに思えてしまって、
感傷に浸っていた。

「ばっかだよなあ・・・。」

何事も、案ずるよりも産むが安し。

離れるまではあんなに不安だったのに。

この桜の木の下で涙した日から、
気がつけば1年が経過しようとしている。

花瓶に生けて、薄紅色の優しい色を眺める。


「・・・もしもし?まお?
うん。うん。

・・・ん?今、お前を愛でていたところ。」

柔らかな声が、目の前にあるソメイヨシノから発せられているようだ。

「ん?どういう意味かって?・・・・そのまんまだよ。
純潔で、すぐれた美人。ソメイヨシノの花言葉。」

電話の向こうの温度があがる。

目の前にあるソメイヨシノがふっと香り立ち、
薄紅色が深くなった気がした。





-------------------------------------

大ちゃんサイドだけの映像が流れてきました~。
イメージとしては、美貌~のオープニングのようでした^^