「うっほほ~いっ!!」

撮影が終ると同時に、ホテルの部屋に直行してベッドにダイブした。

南の島の美しい海。緑豊かな大自然。どこまでも澄み渡る青空。

に、テンションがあがりまくった。

・・・、ということにしておこう。


でも、本当の理由はここにある。


セーフティーボックスを開けてパスポートを取りだすと、
<USA>のスタンプが押してある入国ページを眺めてニヤニヤする。

まあ、日本から時差1時間、ちょびっと南に下っただけ。
日本語だってほぼ通じるし、飛行機に乗っていた時間だって、
乗り継ぎによっては国内線よりあっと言う間についてしまう。

しかしっ!!
しかしっ!!だ。

実際の距離も時差もちょこっとしか縮まっていないとは言え、
今はまおと同じユナイテッドステイツアメリカ。にいるんだっ!!

ごろん。ごろん。とパスポートを握り締めながら、ベッドの端から端まで転げまわる。

あーっ!
この感動と歓びを誰かと分かち合いたいっ!!

と、思うけれど、どうしてこんなにもグアム。ではなく、USAという響きが嬉しいのか、
なんて、俺とまおしかわからない。

やっぱり、こらえきれなくなって、国際電話・・・もとい、国内電話をかけてしまう。
ふふっ。いいだろ?この変換。


<ま~おっ!俺、今撮影でグアムにいるんだけど・・・>
<そうなんだあ。海きれいでしょ?>

至極当然当たり前な反応・・・。

一時間も近づいてるんだぞっ!?
国内電話なんだぞっ!?

<ま~おっ!俺、今アメリカにいるんだけど?>
<あっ、そっかあ。グアムってアメリカ領だもんね。日本のほうが近いけど。>

いや、その感想いらないから。
むしろ、日本から遠ざかったことを喜んでくれ。

<あ~、なんか今、俺、幸せだなあ・・・・。>

パスポートのスタンプを眺めているうちに、幸運の紋章のように思えてきて、
ちゅ!と派手に音をたててキスをする。

<・・・大ちゃん、何してるの・・・?
もしかして、海外だからって羽根伸ばして、女の子連れ込んでるんじゃあ・・・?>

リップ音を何と勘違いしたのか、低い声で見当はずれなことを言う。

<っなわけないだろっ!?お前と同じ国にいるんだなあ。って思うと嬉しくて、パスポートにキスしてた。>
<・・・ばっかじゃないの。>

暫くの沈黙の後、ぐっさりと冷たい突っ込みが入る。

<・・・まおちゃん、嬉しくないんだ。>
<・・・や、だって、そんなかわんないでしょ?日本にいるのと。
・・・あ、でも、大ちゃんが嬉しいって思ってくれるのは、嬉しいよ?>

<・・・そんな、付け加えたように言ってくれなくても、いいよ。
大ちゃんは、一人寂しくパスポートとふて寝するから。>
<ふて寝って・・・!しょうがないなあ。今度のお休みには、帰国してあげるから>

笑い声交じりにため息をつくまおは、なんだかんだ言ってもやっぱり優しい。

<うそうそ。女の子連れ込まずに、ふて寝しちゃう大ちゃんがとっても好きだよ?>

ちゅ。と電話越しにキスをくれて、

<じゃあ、おやすみ。確かに一時間だけ近くなったと思ったら嬉しいね。>

そう言って、電話を切った。


ちょびっとの違いは、でっかい幸せを運んでくる。





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こんな情けない大ちゃんでごめんなさい。
まおも、ここまでツンでれじゃないかも・・。

だけど、こんな感じのやりとりをしてる二人が好きなの~~。