「あ。チョコ忘れてた!」

今日の企画のことでいっぱいいっぱいで。
せっかくだから、ぼくも大ちゃんに何かしてあげたい。って思っていたのに。

「ううん。今から買いに行くのもなあ・・・。夜になると道もアイスバーンになって危ないし。」

それに、チョコをもらうことに対する思い入れ。というものは希薄そうだった。

「でも、何かしたいなあー・・・。」

うーん。と悩みながら部屋をぐるぐるしていると、個人的に大好きで楽しみにしておいたアポロチョコがあった。
そもそも、大ちゃんはそんなにスイーツが好きではない。
厨房もスタッフさんが作ってくれるビターチョコのザッハトルテに匹敵するものなど、何もないのだ。

「うん。ぼくらしていいや。」

うーんと背伸びしてもなかいっこないところで勝負しても仕方がない。
そもそも、どれだけ大ちゃん好みのチョコが贈れるか、イベントではないのだから。

ガラスの瓶にざらざらと移し変えた甘い香りのする星は、リボンで結ぶと宝物のように思えた。

「・・・まだかなあ?また、雪が降ってきた・・・。」

雪祭りみたいだねっ!と昼間はしゃぎまわったハートのオブジェは無事だろうか?
ぱさり。ぱさり。と雪の重みで枝から滑り落ちる雪の音を聞きながら、暖炉の炎を眺める。

今頃は食後のデザートでも切り別けているのだろうか?
それとも、ワインのサービスにでも回っているのだろうか?

ぼくの大好きなコンシェルジュとしての大ちゃんの姿を思い浮かべながら、暖炉のぱちぱちと弾ける音を聞いていると、東京での生活がとても遠い昔のことのように思える。