----どうして、この腕を摑んでしまったのだろう?
はっと、振向いたまおの目が潤んでいる。
たった今、「じゃあね。お疲れ様。」と、笑顔を交わしたばかりなのに。
一瞬ひるんだ俺が、腕を摑む力を緩めた隙に、まおが逃げるように去ってゆく。
小さくなってゆく背中を眺めながら、ずっと。
今にも泣きそうだった瞳の意味を考え続けるのだった。
「おいっ!待てよっ。」
「・・・・っ!」
このまま別れてはいけない。
涙の意味など理解できないまま、警告の鐘に突き動かされるように消え入りそうなまおの背中を追う。
ふたたび摑んだ腕は、ひどく頼りなく思えた。
「おれ、次の現場あるから・・・。」
きゅ。と唇を噛み締めたまま、うつむく。
「こんな時間から?しかも、徒歩で?」
見え透いた嘘に距離をつめると、怯えたように後ずさりする。
「なんなんだよ。急に。」
「急に?急にじゃないよ。お仕事は終ったじゃんか。」
きっと睨みつけるように俺を見詰めてくる瞳は、苛立ちと脆さがない交ぜになったようだった。
「何?何か怒らせるようなこと、した?俺。」
「・・ううん。してない。してないから、困ってるんじゃない・・・。」
睨みつけたかと思えば、頼りなくすがり付いてくる。
「もう、卒業しなきゃ。いつまでも甘い気持ちひきずってるの、よくないよ。
ちゃんと、次の作品に向かいあわなきゃ・・・。」
「どういう意味だよ。それ。」
「大ちゃんも言ってたじゃん。俺たちは卒業しますが。って・・・。」
「だからって、プライベートまで急によそよそしくなる必要があるかっ!?」
「おれには、ある・・・。」
うつむいた大きな瞳からは、今にも涙がこぼれそうだ。
「だって、ちゃんと失恋しないと前に進めない・・・。」
「失恋ってお前。ただ単に卒業しただけだろ?タクミクンは、これからも続いてゆくんだし。
ほら。なんだかんだでお前とは一緒になる現場だってあるんだし。別に一生の別れとかじゃないんだし。」
きゅ。と唇を噛んだまおの瞳が、俺を射抜く。
「タクミとギイは、ね。大ちゃんは?大ちゃんは平気なんだ。普通に昨日まで恋人役やってたんですよね。
って笑えるんだ?おれだけ、なんだ・・・。」
「まお?・・・・何言って?」
ずるずると力を失ったまおが、膝を抱えて床にへたりこむ。
「まおのこと、嫌いになるわけじゃなし、失恋って・・・。」
「・・・じゃあ、好き?」
「・・・え?」
「タクミじゃなくなっても、ずっと好き?」
膝の間に顔を埋めてしまって表情は見えないけれど、肩が小刻みに震えている。
泣いている、のだろうか?
「そりゃ、好きに決まってる・・・」
「弟として、とか、後輩として、とかじゃなくて?」
言葉をかぶせるように、まおが畳み掛けてくる。
「そんな器用に戻れないよ・・・。ずっと大ちゃんだけを見てきたのに。」
まおの真っ直ぐな想いが痛いほど伝わってくる。
タダのオトウト。
タダのコウハイ。
まおの耳にはずっとそんなふうに聞こえていたのだろうか。
この映画が終れば、その他大勢の一人でしかない。と。
俺にとってのまおの存在って、何だ?
仕事上でのつきあい?
役を離れたら終ってもいい関係?
じゃあね。と笑って帰ろうとしたまおの腕をつかんでしまったこの手は何だ??
「俺たちが卒業しても・・・。」なんて言いながら、誰よりも終ってほしくなかったのは、自分ではなかったのか?
俺に向けつづけてくれた笑顔を他の誰かに向けて。
「過去の共演者です。」だなんて、笑顔で紹介されたならば。
・・・苦しい。
離したくない。
ずっとそばにいて欲しい。
渡辺大輔として、そう思う。
「・・・弟でも、後輩でもなく、一人の人間として、まおが好きだよ。」
うつむいたままのつむじに口づけると、何でも一人でしょいこみすぎる肩を抱き締めた。
--------------------------------
ここで終わり、って駄目なパターンですかねWW
告白シーンだけ描きたかったのおWW
どおおっしても、タイトルが浮かばないので無題のままでWW
はっと、振向いたまおの目が潤んでいる。
たった今、「じゃあね。お疲れ様。」と、笑顔を交わしたばかりなのに。
一瞬ひるんだ俺が、腕を摑む力を緩めた隙に、まおが逃げるように去ってゆく。
小さくなってゆく背中を眺めながら、ずっと。
今にも泣きそうだった瞳の意味を考え続けるのだった。
「おいっ!待てよっ。」
「・・・・っ!」
このまま別れてはいけない。
涙の意味など理解できないまま、警告の鐘に突き動かされるように消え入りそうなまおの背中を追う。
ふたたび摑んだ腕は、ひどく頼りなく思えた。
「おれ、次の現場あるから・・・。」
きゅ。と唇を噛み締めたまま、うつむく。
「こんな時間から?しかも、徒歩で?」
見え透いた嘘に距離をつめると、怯えたように後ずさりする。
「なんなんだよ。急に。」
「急に?急にじゃないよ。お仕事は終ったじゃんか。」
きっと睨みつけるように俺を見詰めてくる瞳は、苛立ちと脆さがない交ぜになったようだった。
「何?何か怒らせるようなこと、した?俺。」
「・・ううん。してない。してないから、困ってるんじゃない・・・。」
睨みつけたかと思えば、頼りなくすがり付いてくる。
「もう、卒業しなきゃ。いつまでも甘い気持ちひきずってるの、よくないよ。
ちゃんと、次の作品に向かいあわなきゃ・・・。」
「どういう意味だよ。それ。」
「大ちゃんも言ってたじゃん。俺たちは卒業しますが。って・・・。」
「だからって、プライベートまで急によそよそしくなる必要があるかっ!?」
「おれには、ある・・・。」
うつむいた大きな瞳からは、今にも涙がこぼれそうだ。
「だって、ちゃんと失恋しないと前に進めない・・・。」
「失恋ってお前。ただ単に卒業しただけだろ?タクミクンは、これからも続いてゆくんだし。
ほら。なんだかんだでお前とは一緒になる現場だってあるんだし。別に一生の別れとかじゃないんだし。」
きゅ。と唇を噛んだまおの瞳が、俺を射抜く。
「タクミとギイは、ね。大ちゃんは?大ちゃんは平気なんだ。普通に昨日まで恋人役やってたんですよね。
って笑えるんだ?おれだけ、なんだ・・・。」
「まお?・・・・何言って?」
ずるずると力を失ったまおが、膝を抱えて床にへたりこむ。
「まおのこと、嫌いになるわけじゃなし、失恋って・・・。」
「・・・じゃあ、好き?」
「・・・え?」
「タクミじゃなくなっても、ずっと好き?」
膝の間に顔を埋めてしまって表情は見えないけれど、肩が小刻みに震えている。
泣いている、のだろうか?
「そりゃ、好きに決まってる・・・」
「弟として、とか、後輩として、とかじゃなくて?」
言葉をかぶせるように、まおが畳み掛けてくる。
「そんな器用に戻れないよ・・・。ずっと大ちゃんだけを見てきたのに。」
まおの真っ直ぐな想いが痛いほど伝わってくる。
タダのオトウト。
タダのコウハイ。
まおの耳にはずっとそんなふうに聞こえていたのだろうか。
この映画が終れば、その他大勢の一人でしかない。と。
俺にとってのまおの存在って、何だ?
仕事上でのつきあい?
役を離れたら終ってもいい関係?
じゃあね。と笑って帰ろうとしたまおの腕をつかんでしまったこの手は何だ??
「俺たちが卒業しても・・・。」なんて言いながら、誰よりも終ってほしくなかったのは、自分ではなかったのか?
俺に向けつづけてくれた笑顔を他の誰かに向けて。
「過去の共演者です。」だなんて、笑顔で紹介されたならば。
・・・苦しい。
離したくない。
ずっとそばにいて欲しい。
渡辺大輔として、そう思う。
「・・・弟でも、後輩でもなく、一人の人間として、まおが好きだよ。」
うつむいたままのつむじに口づけると、何でも一人でしょいこみすぎる肩を抱き締めた。
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ここで終わり、って駄目なパターンですかねWW
告白シーンだけ描きたかったのおWW
どおおっしても、タイトルが浮かばないので無題のままでWW