「今日は冷えるから、ココア入れるね。」
「珍しいな。ココアだなんて。」

「・・・ん。舞台初日だから、甘いもの欲しいかなあ?と思って。」

まおが、ミルクパンで丁寧に牛乳をあっためている。
ミルクの甘い香りがふあん。と漂ってきて、昂ぶっていた神経が鎮まってゆく。

「・・・ああ。そうだな。」

普段はミルクで割ったココアなど、甘ったるくて飲めない。と思うのだけれど。
緊張が過ぎて、食欲はないこんな日にはぴったりかもしれない。

まおのこういう押し付けがましくない気配りが好きだ。

「・・・はい。」

コトン。と幸せの音を鳴らして、カップがテーブルに置かれる。

「サンキュ。」

さっそく一口飲むと、優しい甘さがじんわりと胃に沁みた。

「・・・ん。おいし。」

両手でカップを包みこみながら不安そうにこっちをうかがっているまおの顔が、ほっと緩む。

「よかったぁ。」

ふわ。と花が咲いたように綻んだ笑顔に思わず見とれていると、まおが足先で俺の足をつついてくる。

「・・・ん?何だ?」

まおに聞いても、答えずにじっと俺の目を見詰め続けている。

何度も、何度も描かれる曲線。
熱っぽく絡まるまおの視線。

「・・・あ。」

頭の中で曲線が繋がり、意味をなす。

「・・・ありがとう。まお。俺も、愛してるよ。」
「・・・・。」

ちゅ。と軽く音を立てて頬にキスを贈ると、ぱっと綺麗な紅が散った。


ああ。春ももうすぐ、だな。


ささやかな、二人だけにわかるSt,balentine



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もう一本^^

まおがニューヨークとか、そういう現実は無視して(笑)
やっぱり、ほんわかスイートでしょう!大まおはっ!