「だいちゃ~ん。こっち来て?」
リビングから呼ばれて、顔をのぞかせると、テーブルの上に色とりどりのチョコが並んでいた。

「今日は何の日か知ってる?」
「そりゃ。もちろん。バレンタインだろ?」

ずら~っと並んだチョコを眺めながら、蕩けそうにご機嫌な笑顔の恋人に向かって言う。

「うん。そうだね。」
「これ。全部俺にか?すっげー量なんだけど。」

まおの気持ちは嬉しい。
嬉しいのだけれど、こんなに大量摂取しては、腹回りが心配だ。
・・・もしかしたら、このままいい雰囲気になってベッドインとかってこともあるかもしれないのに、
鼻血ぶっこくいて大失態を晒すかもしれない。

「まお?お前の愛はとっても嬉しいけど、受止め切れな・・・いやいや。食べきれないだけで、
愛情は全部受け取るからっ!」

以前にまおの気合いの入りまくったチョコを間食できずに、しょぼぼーん。
と、落ち込ませてしまった経験のある俺は、拳を固めて力説する。

なのに、まおは。

チョコをぱくっと口に入れて、きょとん?とした顔をする。

「もちろん、一緒に食べるんだよ~。こんな大量に一人で食べたら、胸やけするでしょ?
もう、若くないんだから。」
「若くない。だけ余計だっ!!」

こらっ!と、首を絞めてやると、きゃはは~。と笑いながら、唇を重ねてくる。

まおの舌先でとろり。と溶かされたチョコが、流れ込んでくる。

「・・・おいし?」
「・・・ん。」

悪戯っ子のように、俺の顔色を伺いながら、ぺろり。と自分の唇に残ったチョコを舐め取る様は、
気品のある色香漂う猫のようだ。

「それにしても、大量に買いこんだな~。お前。」
「だって、今日はチョコの日。でしょ?この時期限定の商品がたあっくさんあるからついつい全制覇しちゃうんだよねっ!」

「ねっ!ってお前・・・。」

チョコメーカーさんにまんまと踊らされているというか、喜んでのっかっているというか。

「ああ。ほんと、幸せだよね~。一年に一回の贅沢だもんねえ。」
「・・・まあ、そうだな。」

本当に、心底幸せ。という顔のまおを見ながら、チョコメーカーに踊らされるのも悪くない。と思ってしまう。
世の中の「チョコごとき。」などと、嘯きながらも内心うきうき・わくわくでたまらない男子代表のような気がしてくる。
要は、名目なんて何でもいいのだ。
恋人の幸せそうな顔さえ見ることができれば。

なんだか、愛を告白する日。というより、チョコを楽しみにする日。
のウエイトのほうが大きい気がするけれど。

「・・・だから、大ちゃん。他の子からのチョコ食べたら駄目だよ?
もし、ここになかったら、同じの探してくるからねっ!」

しんけん。

と顔の真正面にかいてありそうな表情で、ずいっと身を乗り出してくる。

「・・・まさか。お前だけで、十分だよ。」


やっぱり、愛を告白する日だ。

俺の恋人は、誰よりもかわいい。


舌先に僅かに残ったチョコを絡めとるように、キスをした。



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あと一時間でバレンタインも終っちゃうけどW
大まおのお話がないのは、あまりにも寂しいでしょWってことで、急遽かきました^^