「あの星がほしいの」

ツリーのてっぺんに飾られた一番星がトクベツなものに思えて、駄々をこねた。

せっかく飾ってあるのに。と、手に入れることのできなかった星。

うんと背伸びをして、踏み台を何個も積み上げて、こっそり盗んだ。

キラキラと輝く星はとっても綺麗で、ペンダントにして宝物のように持ち歩いた。

いつしか存在を忘れ、ガラクタの山から出てきた一番星は、安っぽいプラスチックのおもちゃだった。


「あの星まで行きたいの。」

今でも、ずっと手を伸ばしてる。

憧れ。希望。目標。

そんなものが交じり合ったまばゆいばかりの光が、私を照らす。

あと、もうちょっと。
あと、もうちょっと。

必死に背伸びして、頑張って。

ふくらはぎがぱんぱんになっても、まだ背伸びして。

そのうち、筋肉がついてきて、背伸びが苦痛にならなくなって。


「あの星には、何があるの?」

たどり着くことがすべてで。

そんなこと考えたこともなかった。

手に入れてしまえば、光を失い安っぽいおもちゃになってしまわないだろうか。

楽園の地だとしても、その先には何があるのだろうか。

まばゆい光は、まだまだ遠くにあるというのに、ふと立ち止まったりする。


「星はひとつじゃないんだよ。」

前に進めずにたたずんでいると、天使が手を引く。

何の飾りもつけない素足がとても美しい。

無理に自分を飾って、背伸びしてつけた筋肉は努力の証。

自分の誇り。

安っぽいおもちゃだったなら、別の星を見つければいい。

辿りついた先には、また無数の星が空にまたたいているだろう。


「あの星がほしいの。」

幼き日の記憶。

どうしても手に入れたかった気持ちを忘れないでおこう。

いつまでも、手を伸ばし続けよう。

大切な私の一番星。