「く~うっ!」
澄み渡る青空に、健康的な笑顔をいっぱいに撒き散らして、大学で新しくできた友人の日向が手をふりながらやってくる。
まるで太陽のような彼に、「空」と呼ばれると、嬉しいような後ろめたいような気分に陥る。
父親が澄み切った青空のように、美しい心の持ち主になりますように。
と、願いを込めてつけてくれた名前。
なのに、ぼくは大空の下を胸をはって歩けないような秘密をもってしまいました。
能天気なまでに無邪気で明るかったぼくは、いつの間にか年齢の割りに落ち着いていて、物腰の柔らかな。
と、形容されるようになってしまった。
決して自分の内をさらけ出さないように、無意識に人の顔色を伺い、当たり障りのない会話を選ぶようになったからだ。大人は、年齢の割りに気配りがきく。と褒めてくれるけれど、本当は、みんなと一緒に何も考えずにはしゃいでいたかった。
唯一、「空」を自分の名前だと言えるのは、星空が好きなこと。
真っ青な青空を眺めていると、なんだか後ろめたい気分になってしまうのだけれど、
果て、のない真っ暗な空に、満天の星が瞬いているのを見ると心が安らいだ。
太陽のように派手明るさはないけれど、光ることだけが使命であるかのように、ひっそりと瞬いている。
季節によって移りゆく星空の中でも、一番好きなのは、天の川が見れる初夏の空だった。
学校の研修旅行かなんかで行った科学館でふと目に留まった天の川の模型。
無数の砂粒みたいな星が無限に、と思えるほどに散らばっていて、急に自分の存在がちっぽけに感じた。
地上から見上げる天の川は、ぼんやりとした霞みたいなものでしかないのに、宇宙にはこんなにも無数の星が存在していたんだ。
友人たちは興味なさそうに、ゲラゲラと笑いながら、全然違うテレビの話題で盛り上がっていたけれど、
ぼくはその模型の前から動けなかった。
広大な宇宙の中にある、ちっぽけな地球。
そのちっぽけな地球でもがいている、ちっぽけな自分。
天の川の前では、ぼくなんて無に等しくて、水溜りの中で溺れる蟻のようだ。
大丈夫。
今見えている世界だけが全てじゃない。
息が詰まりそうだ。ともがいているのは、実はちっぽけな水溜りなんだ。
苦しくなれば、目を閉じて天の川を思い浮べた。
澄み渡る青空に、健康的な笑顔をいっぱいに撒き散らして、大学で新しくできた友人の日向が手をふりながらやってくる。
まるで太陽のような彼に、「空」と呼ばれると、嬉しいような後ろめたいような気分に陥る。
父親が澄み切った青空のように、美しい心の持ち主になりますように。
と、願いを込めてつけてくれた名前。
なのに、ぼくは大空の下を胸をはって歩けないような秘密をもってしまいました。
能天気なまでに無邪気で明るかったぼくは、いつの間にか年齢の割りに落ち着いていて、物腰の柔らかな。
と、形容されるようになってしまった。
決して自分の内をさらけ出さないように、無意識に人の顔色を伺い、当たり障りのない会話を選ぶようになったからだ。大人は、年齢の割りに気配りがきく。と褒めてくれるけれど、本当は、みんなと一緒に何も考えずにはしゃいでいたかった。
唯一、「空」を自分の名前だと言えるのは、星空が好きなこと。
真っ青な青空を眺めていると、なんだか後ろめたい気分になってしまうのだけれど、
果て、のない真っ暗な空に、満天の星が瞬いているのを見ると心が安らいだ。
太陽のように派手明るさはないけれど、光ることだけが使命であるかのように、ひっそりと瞬いている。
季節によって移りゆく星空の中でも、一番好きなのは、天の川が見れる初夏の空だった。
学校の研修旅行かなんかで行った科学館でふと目に留まった天の川の模型。
無数の砂粒みたいな星が無限に、と思えるほどに散らばっていて、急に自分の存在がちっぽけに感じた。
地上から見上げる天の川は、ぼんやりとした霞みたいなものでしかないのに、宇宙にはこんなにも無数の星が存在していたんだ。
友人たちは興味なさそうに、ゲラゲラと笑いながら、全然違うテレビの話題で盛り上がっていたけれど、
ぼくはその模型の前から動けなかった。
広大な宇宙の中にある、ちっぽけな地球。
そのちっぽけな地球でもがいている、ちっぽけな自分。
天の川の前では、ぼくなんて無に等しくて、水溜りの中で溺れる蟻のようだ。
大丈夫。
今見えている世界だけが全てじゃない。
息が詰まりそうだ。ともがいているのは、実はちっぽけな水溜りなんだ。
苦しくなれば、目を閉じて天の川を思い浮べた。