「新しい入浴剤買ってきたぞ。」
「えっ。なになに~?」

どんな香りのするものだろう。とわくわくして大ちゃんの手元を覗きこむと
でっかく「きき湯」描かれたお世辞にもお洒落とは言いがたいパッケージがあった。

「ちょっと稽古続きで筋肉固まってるからなあ。」
「あ。うん。そうだね。」

肩に手を置きながら、本当にだるそうに首をぽきぽきと鳴らしている。

「じゃあ、先風呂入るわ。」
「うん。わかった。」

パタン。と扉が閉められて、思いっきりドアを蹴り飛ばしてやりたくなった。

---ちょ。一緒に入ろ?じゃないのかよっ!

百歩譲って、色っぽい妄想を掻きたてる入浴剤じゃなかったとしてもっ!
筋肉痛なんだよなあ。なんてジジムさいこと言っててもっ!

ちょっと、まお、一緒に入ってマッサージでもしてくれないか?
だけでも、テンションがあがるのに。

どーせ、どーせ、もう新婚気分なんて薄れて、ゆっくり一人で風呂に入りたいんだよね。


ズルズルと閉められたドアを背に座り込む。

人の気も知らないで、軽快に聞こえるシャワーの音が憎たらしい。
きっと、気持ちよさそうに目をつぶっているシャワーを浴びている人はもっと憎たらしい。

こんなところでいじけてないで、「一緒に入りたいのに。」
ってドアを開けれれば、どんなに簡単だろう。

きっと大ちゃんは、「一緒に入りたいなら、最初から素直にそう言えよな。」
と笑って、じゃれるように抱き締めてくれるのだろう。

それとも、「まおのスケベ。」とかって意味深に笑ってからかってくるだろうか。


膝を抱えて悶々としていると、背中がふっと軽くなり、視界がぐらりと揺れた。

後頭部に衝撃が走ったかと思うと、痛みでぼんやりとした視界の中、呆れ顔の大ちゃんと目が合う。


「・・・何してるの?お前。」
「・・・あ。ちょっと・・・天体観測?」

我ながらなんてマヌケないい訳だろうと思う。

びちゃびちゃに濡れた固い風呂場の床で、ハメ格子のある小さな窓から、
好んで空など見上げる奴などいない。


俺の顔をじっと見詰めた大ちゃんが、腕を持って立たせてくれると、

「ほら。まおも入るぞ。」

と、有無を言わさず風呂場に引っ張りこまれた。


腰にバスタオルを巻いて、血色良く上気した肌をちらり。と見て、強引さに嬉しくなる。


背中でアピールしまくった無言の意地っ張り。

言葉にできなかった気持ちを、何も言わずに強引にさらって行ってくれた。


結局のぼせあがった大ちゃんの頭を膝に乗っけて、
幸せ半分・申し訳なさ半分で、うちわで顔をパタパタあおいであげる羽目になった。


「ごめんね。大ちゃん。ありがとう。」
「なんでまおが謝るんだよ。かっこわりぃのは俺なのに。」

「ん。でも、言いたい気分なの。」
「わけ、わかんねー。」

膝に乗っけた重みの分だけ、素直になれたような気がして、まだ赤くのぼせた唇にキスをした。




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ゆあちゃーん!
ゆあちゃんの妄想の一行目、から、私はこんなふうに妄想が膨らんだよっ!

一緒に入ろう。じゃないのっ!?
うちの大まおさんなら、まずそこでどっちかが拗ねるなあ・・・(笑)とWW

大ちゃん目線の話が多かったので、まおにしてみた^^