「起きるなよ。まお。」

ふわふわとした浅い眠りの中、そう聞こえた気がした。

誰の声だっけ?
ここ、どこだっけ・・・。

ギシ。とベッドがきしむ音とともに、体が沈みこむ。
ふわ。とした浮遊感とともに、温かくてやわらかい何か、が頬に触れる。

・・・キス?

自分の意思とは関係なく与えられたものなのに、不思議と嫌悪感はなく、むしろほっと安心して更に深い眠りへと誘われる。

声の主を思い出そうとするけれど、夢うつつの意識は現実を捕らえさせてくれない。

寝返りを打った瞬間に、なんとなくいつものベッドじゃない。とぼんやりと思った。


「おはよ?まお。」
「・・・あ。おはよう。」

目が覚めたら、朝日を背負い込んで眩しくて見えない誰か、が微笑んでいた。

昨日の夢の記憶が思いだされて、照れくさくなってしまう。

誰か。なんて確信なんてもてないのに。
もしかしたら、ぼくの願望が見せた夢かもしれないのに。

もしかしたら夢で頬に触れた何か。は大ちゃんの唇だったんじゃないか。だんて、自意識過剰もいいところかな。

タクミとして触れたことのあるふっくらとした唇とじっと見詰める。

あの唇と、キス、したんだ・・・。


「・・・なに?どした?ぼーっとして。まだ寝が足りないか?
おこちゃまだなあ。まおは。」
「あ・・・。うん。いくらでも寝ちゃうんだよね。」

ぼくの頭をくしゃりとなでて、寝癖を手櫛で直してくれる大きな手のひら。
「どした?」とぼくの顔を覗きこむ瞳はどこまでも優しい。

ふあん。と胸の奥があったかくなるのに、ぎゅうっ!と締め付けられるように苦しい。
危うい、バランス。

本当の兄は年子だからわかんないけれど。
きっと、年齢の離れた兄というものは、こんなふうに可愛くて仕方がない。庇護欲をかきたてられる。というような優しげな眼差しをするのだろう。

「弟みたいに可愛い存在です。」と言われるたびに、トクベツに可愛がってもらえて、嬉しいけれど、求めているものとは微妙にズレていて寂しいような感情を覚える。

本当は、愛してるよ。と囁いてもっと熱っぽい瞳で見詰めてほしいのに。

けれど。

ぼくは貴方のかわいい弟だから。

せいいっぱい子供っぽく、かわいらしく見えるように。


ふわあ。とわざと大きなあくびをして、目の端を擦った。


「やっぱ、高校生にはキツイよなーっ。このスケジュールっ!
朝メシ食ったら、元気でっかな?」


ひまわりのように明るく笑った彼が、ぴょん!とベットから飛び降りると、ぼくの手を引いた。

「・・・うん、そうだね。ごはん食べたら目が覚めるかも。」


・・・なんて、もうとっくに目なんて覚めてるよ。


夢のままで。


ずっと、ずっと夢のままで。


頬に触れた何か。は貴方の唇だったと思っていたい。



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虹色のころの大まおさんですね^^

長編はふわふわと断片的にシーンが浮かぶんだけど、やっぱりこれ性格が大まおじゃない・・Wと、すすみません(笑)
しかも、BL要素がまたまたあまりないという・・・W

私の中に同人誌の素質がないんではなかろーか・・・。

お正月・・・わあっ!7日間もお話かいてなかったんだねっ!WW
まあ、リハビリを兼ねて、短編を暫くかこうと思います^^