彼が箱の山にちらりと視線を送る。

「・・・どうして、包装したままなんですか?」

彼の気持ちを疑うわけではないのだけれど。
ぼくの作品で部屋が埋め尽くされていたならば、こんなすれ違いもせずに済んでいたのだ。

「・・・なんだか、魔法が溶けそうだったから。」
「・・魔法?」

何のことかわからずに、彼を見上げると耳たぶをほんのりと染めて視線を泳がせていた。

「少しでもお前と話していたくて、わざわざプレゼント包装にしてもらってたんだよ。
硝子の向こうの存在だったお前と、客としてかもしれないけど、やっと話することができて。
苦労して勝ち取った幸せだったから、包みをほどくのが勿体無かったんだよ。」
「・・・意外とロマンチストなんですね。」

そんなふうにずっと思っていてくれたなんて。
ぼくが想っているよりも、もしかしたらずっと。
彼の気持ちのほうが大きいのかもしれない。

嬉しくなって、ふふっと笑うと、

彼がぶっきらぼうに「悪いか。」とつぶやいた。