ぼくにとってはトクベツなこと。になっていた硝子磨きを「仕事だから。」と言い聞かせて磨き上げる。

彼がいつも触れてくれていたトクベツな硝子は、ただの遮蔽物になってしまった。

「・・・よかったじゃないか。」

もともと、ただ通り過ぎるだけの存在だったのだ。
ぼくの店を気に入ってくれて、大切な人と訪れるようになってくれて。
二人とも幸せそうで。

それだけで、十分じゃないか。

なのに、どうして・・・。

「今日は風が強いな・・・。」

目にあふれ出してしまったモノにいい訳をして、ゴシゴシと乱暴に袖でぬぐった。