それから、週に一度ぐらいのペースで彼は彼女と店を訪ねてくるようになった。

決して届かない。と思っていた硝子の向こう側の彼がこんなにも近く、手を伸ばせば触れる位置にいるのに。
手を伸ばそうとすると、可愛らしい彼女が笑顔でひょこっと覗き込む。

「ねえ。ねえ。これ、かわいくない?ダイスケの部屋に飾りなよ~。」
「人の部屋をなんだと思ってるんだ。」

時折聞こえてくる親密そうな会話が、胸を締め付ける。
耳を塞いでしまいたい反面、気になって仕方がない。

どんなふうに二人で過ごすの?
どうしてぼく(の作品)は、そこにいなくちゃいけないの?
貴方を笑顔にできたら。と願っていたけれど、同時に悲しみを味わうことだったんだね。

彼の手のひらを守るように包み込んでいるぼくの手袋だけが、彼の側にいれるような気がした。