お互いの存在を幻ではない。と確かめるように肌の至るところに触れる。

光に透ける様な真っ白な肌が、満月に照らされて青白く光る。

「・・・ケイ。綺麗・・・。」
「・・・綺麗なものか。」

オレの肌にキスを落としながら、ケイが自虐的に微笑む。

「ううん。本当に、綺麗。オレにとっては、こんなに綺麗な存在ないよ。」
「こんなに綺麗なショウに言われたくないな。」

そっと両頬を包み込まれて、アメジスト色に光る瞳に見詰められる。

「・・・瞳も。吸い込まれそうに、色っぽいよ。」
「・・・怖くないか?化け物の目だぞ?」

「化け物でも何でも。ケイはケイだよ。」

ケイの頭を抱き寄せると、ひんやりと冷たい肌が重なってきた。


ちゃんと、わかってる。
ケイは、バンパイアであること。
故に、自分を憎んでいること。
オレを愛するからこそ、巻き込みたくない、と苦しんでくれていること。

「ケイもずっと一人ぼっちだったんでしょ?オレだってケイに会うまでは、一人ぼっちだったんだよ?」

はっ。としたようにケイがビクリ、と肩を震わせる。

「だから、もう、一人にしないで?」
「・・・・。」

ケイが何かと戦うように、きゅ。と無言のまま唇を噛み締める。

「・・・飢えと乾き。血の臭いに血が騒ぐあの感覚。捕食した後の、慣れることのできない罪悪感。
・・・綺麗なショウには、きっと耐えられないよ・・・。」
「暴走しそうになったら、ケイが止めて?しんどくなったら、ケイが慰めて?
ケイは自分のこと化け物だって言うけど、人間だって他の命あるものの恩恵を受けて生きているんだよ?
ケイは無駄な殺傷はしない。生きてゆくのに必要最小限で、なのに自分を責めてる。
・・・どれだけ、罪のない人間がこのストリートで殺されたと思う?
親がいないというだけで、人格なんて認められずに。生きる権利さえも認められずに。
餓死してゆく子供、乱闘に巻き込まれて命を落とした仲間。
モノのように道具にされて、使い物にならなくなったらゴミのように捨てられて。
オレはケイがいてくれたから・・・。生きることの喜びも、安心できる居場所も、知ることができたんだよ?」


何が正義で、何が悪か。なんて。
誰が、決めるのだろう?

オレにとっては、自分の感じるものだけが真実。


「・・・光を避け、薄暗い闇と共にしか生きられないんだぞ?」
「・・・ケイの存在は、光そのものだよ?出会った瞬間から、ずっとそうだった。」


一人ぼっちだったオレを救ってくれた。
腹の足しにもならないボロボロになったキャンディーを受け取ってくれた。
何の得にもならないガキのオレの世話を焼いてくれた。


「ケイがいれば、毎日が晴天みたいなもんだよ。・・・それに、雨の日は昔っから好きだったよ?」

ケイと一緒にお出掛けできるから。
こんなに天気なのに、他の奴と遊べ。と怒られずに済むから。

「・・・そうだったな。」