あれから、数年が経った。

ショウと過ごした日々に感じていた感情などと言うものは、血を求めて彷徨う本能だけに代わり。
美しい日の光が降り注ごうが、鬱々と暗い雨だろうが、暗く深い森の中で息を潜める。
着物は薄汚れ、髪は乱れ、無精ひげを生やしても誰もとがめるものなどいない。

孤独で、退屈な毎日。

一体俺はいつから存在して、どんな人生を送ってきたのだろう。

そんな疑問さえも、持たぬまま日々が過ぎてゆく。


かつては。

この苦しみから逃れたい。と己の存在ごと消えようとした。
強い直射日光に身をさらすたびに襲う、耐え難い苦痛にショウに助けを求めた。

一人で消えてゆく孤独に耐えることができなくて。
自分の弱さに負けた。



いつものように、夜の繁華街を美味そうな獲物を物色してうろつく。
視線の合ったものは、逃げることができず、吸い込まれるように俺の腕の中に落ちてくる。

特に、満月の夜は。
アメジストに輝く俺の瞳は魔力を増し、抗うことを許さない。


薄汚れた裏小路に獲物を引きずり込み、捕食する。

ぐったり。と力の抜けた屍を地面に落とした瞬間。
ビルの狭間に、キラキラと眩しいオーラが見えた。

「ショッ・・・ウッ・・・!」

シルエットだけ見えた後ろ姿と、懐かしい声。
わなわなと身体が震え、魔力以外の何かに支配され、内蔵を全て口から吐き出しそうになる。

「ヤメテ・・・!ヤメテクレっ・・・!」

俺にすがって泣き叫んでいたショウの声が、頭の中にぐゎんぐゎんと響く。


全て失ったと思ったつもりだったのに。

幾分大人びて、ショウは存在した。

俺のことなど、忘れて・・・・??