「ケイ・・・・。ケイっ!!」

ショウが滑らかな肌を薄紅色に染めて、俺の腕の中で身悶える。
はぁ。はぁ。と甘く吐出される息が、熱い。
俺の名前を呼びながら、ギリギリと背中に爪を立てる。
俺を受け入れようと大きく開かれた脚が、空を蹴る。

「ショウ・・。ショウッ!!」

流れるはずのない汗が、ポタポタとショウの上に落ちてゆく。

「ショウっ!愛して・・・。」

言葉を紡ごうとした瞬間に、汗だと思っていた液体が、ドス黒く濁った血液に変る。

「ショウっ!ショウっ・・・・っ!!」

美しく、穢れのないショウが闇に飲み込まれていく。
ヤメテクレ。モドッテキテクレ!
と叫びながら、ショウの身体を蝕む闇を追い払おうとするけれど、ショウの身体は腐ってゆく。

「許してくれっ!!愛なんて望まないから。傍にいるだけでいいから。
俺からショウを取り上げないでくれっ・・・!」

幸福の絶頂から、絶望のドン底へと突き落とされる。



「ショウっ・・・!」

闇に飲み込まれてゆくショウに手を伸ばすと、しっかりと力強い手に握り締められた。

「・・・どうしたの?ケイ。顔色悪いよ?」

夢、か・・・・。

瞼を開けると、心配そうに覗き込むショウの顔があった。

「なんでもない。ちょっと悪い夢を見た・・・。」
「・・・大丈夫?ケイ。最近なんだか元気ないよ?ちゃんと、捕食してる?」

心配して言ってくれているのはわかっているが、ショウの口から一番聞きたくない言葉。
俺が呪われた存在だということを、お前の口からは知らされたくない。

「うるさいな。ショウが心配するようなことは、何もないよ。」
「・・・・。」

ほら。また傷つけた。
たった一人の俺の救世主なのに。
どうしてその手をとることができないのか・・・。

一人になるのが怖くて。
でも、ショウは”今”を生きているというのに。

ごめん。ショウ。
お前の”今”と、俺の永遠は、あまりにも違いすぎるよ・・・。

ショウが眩しければ眩しいほど。
美しければ、美しいほど。

自分との差をまざまざと見せ付けられるような気がして、息が苦しい。
「愛する資格など、ないのだ。」と耳の奥で、己の声がリフレインする。

わかってる。わかってる。
わかってるから、消えてくれ・・・!

頭の中の声に、俺はただ叫ぶしかできない。


きゅ。と唇を噛み締めて俯くショウの瞳が、キラリ。と光った。