「ねえ?大ちゃん。ねよーよー・・。」

俺の膝にごろりん。と乗っかってきたかと思えば、猫のようにまおが甘える。
瞳はとろん。と潤んでいて、細めた瞼のせいで、余計に瞳の輝きが強調され、無防備に開かれた唇は誘っているとしか思えない。

「寝るってお前。えらくストレートな・・・。」

言葉の含む意味に、内心ドキドキしながら、口元がふにゃあ。と緩む。

そーか。そーか。やっぱりまおだって、本当はしたいんだよな。
そういう類のお誘い、というものは、たいがい無言ですりよってきて、気がついてよ。と言わんばかりに、熱っぽく抱きついてくることがほとんどなのだが。
頭のどこかで感じた違和感よりも、まおから積極的にお誘いを受けた。ということに舞いあがる。

「まお・・・。」

唇を寄せると、

「ちゃんと、ベッド行こうよ。風邪ひくよ?」

とたしなめられる。

おおっ!それもそうだよな。
いくら、暖房が効いているとは言え、こんなとこでおっぱじめてしまっては、寒がりのまおに途中中断されるかもしれないし、なんと言ってもまおに風邪をひかせてしまってはいけない。

相変わらず、自分からベッドに行こうよ。こんなところじゃ、イヤ。と頬を染めている(ように見える)まおにいわれるがまま、寝室についてゆいく。

「じゃあ。まおちゃん。」
「ん・・・・。」

キスをすると、はいはい。って感じで返事してくれるけれど。
シャツをたくしあげると、抱きついてきながら、引きおろされた。

・・・なぜだ?

「・・・おやすみ。大ちゃん。」

幸せそうに、俺の胸に鼻先を埋めて、ぴとっと抱きついたまますうすうと寝息を立て始める。

「・・・まお?」

一人取り残されてしまった俺は、両手も感情もどこに持っていったらいいのかわからずオロオロしてしまう。

「まーおー・・・??」

ゆさゆさと両肩を摑んで揺さぶれば、不機嫌そうにまおが薄く目を開ける。

「うるさいなあ。もうっ。寝ようって言ったじゃない。」

・・・や、言った。確かに言ったけれども。
そっちか?
単に眠たかっただけ??

がっくし。と肩を落として落胆しながらも、まあ、まおが添い寝してほしい。と甘えてくることだってそうそうないのだから、ここは喜ぶべきところだろうか。
そう、自分に言い聞かせて、体の奥に宿ってしまった熱をよしよし。と慰める。

「じゃあ、ちょっと待ってて。まだ風呂入ってないから。」
「ヤダ。一緒に寝る。」

ベッドから起き上がろうとすると、腕を摑まれて布団の中に引っ張り戻される。

何も気がついていない大ちゃんなら、「そーか、そーか。そんなに一緒に寝たいのか。まおってば、積極的だなあ。」なんて鼻の下をのばして、喜び勇んで、布団にもぐりこみ、あんなことやこんなことをしかけるんだろうけれど。

一度宿ってしまった熱を、なだめながらまおのお願いに付き合おうとしている身としては、なかなかの拷問だ。

一旦リセットさせて?まおちゃん。
このまま、何もせずに添い寝なんて、大ちゃんあまりにも可哀想だから。

「お風呂なんて、明日の朝でいいじゃんか。今、眠いのっ!」

本当に眠いのか?疑ってしまいたくなるぐらいの力で、ぎゅうぎゅうと抱きつかれ、離れることができない。
・・・きっと、これだけ密着していたら、俺の脚の間の反応にも気がついているだろうに。

時々、俺ってもしかして人一倍旺盛なんだろうか?と首を傾げたくなってしまう。
と、言っても周囲に同性同士のカップルなんてそうそういるわけでもなく、相談できるような内容でもないのだけれど。

「・・・だから、一緒に寝よ?」

ふたたび、今度は明らかに眠たいせいで瞼がとろん。とし、あくび交じりに無防備に抱きついてくるまおに。

「降参。」

そうつぶやきながら、甘えたな背中を
抱き締めた。


・・・・まあ、俺だけだもんな。
こんなにベタベタ甘えてくるの。


あまり高望みすると、長続きしないぞ?
ダイスケ。


「大ちゃんなら、よりどりみどりでしょ~?」
と、よく言われるけれど。

俺は、このつれない恋人ただ一人に愛されたいだけなのだ。


「愛してるよ。まお。」


ちゅ。と心地よさそうに寝息を立てる天使の髪にくちづけた。


「ん・・。大ちゃん。すき・・・。」


無意識に、すん。と甘えたように鼻を鳴らしながら、まおがすりよってくる。


「その一言で、十分だよ。」


まおの寝顔を見ていると、体の熱が収まってくる隙間を埋めるように、ひたひたとあたたかいものが流れ込んでくるのだった。


そう。これが、愛というもの。