結局全国大会に進出したものの、やはりそこは歴史も実力の差というものだろう。
無名のわが校は、連勝しているチームに圧倒され、最後は迫力負け。といった様子で敗退してしまう。
「まだお前たちには来年がある。俺も本気でやってみたい。と思わせてくれたよ。」
悔し涙を流し、しゃくりあげる馬場とまおの背中を撫でながら、なだめた。
今までは、楽しければいいんです。という空気が流れていたメンバーも、本気で悔し涙を流し、真剣に練習に打ち込むようになった。
弱小テニス部、の別称を持っていた部も、今回の全国進出で見直され、入部希望も後を絶たない。
差し入れだよ~。と呑気な声をあげて、薙が遊びにくる。
誰だ?と、不審がる部員たちに、「昔のダブルスを組んでいたときの相方だ。」と説明するのにためらいを感じない。
木陰の下では、相変わらず「ちょっと息抜き~。」と言いながら、タッキーがサボりに来ている。
倉庫の裏では、馬場が同級生から告白され、オッケーしたんだってさ!と噂が飛び交っている。
「俺っちも、幸せになろうかな。と思って。」
まおに、たった今コクられたばかりらしい女の子のシャメを見せ付けている。
・・・まあ、冷静に見ても、馬場はいい男だ。
外見は言うまでもなく。
手を出しすぎず、さりげなくまおを支え。
甘えて、はしゃいでばかりなのかと思えば、ドキっ!とするぐらい真剣な顔も持っている。
今まで彼女がいなかったほうが不思議なぐらいだ。と噂に混じれば、
同じ中学だったらしい部員が「馬場はまおにベタ惚れだったからなあ。」などと、恐ろしいことを言ってくれる。
よかった。
まおが馬場の男気にほだされる前で。
などど内心胸を撫で下ろしながら、仲間と談笑しているまおを盗み見る。
まおとの出会いによって、少しずつ全てが変わってゆく。
「はいっ!次っ!」
「ういーっす!」
コートに入って、打ち出したボールを馬場が打ち返してくる。
「はいっ!次っ!」
「はいっ!」
しっかりとボールを受け止めたまおが俺に向かってスマッシュを打つ。
ぽーん。ぽーん。とボールが地面を打つ音が心地よく響く。
何より変わったのは。
傷つけることが怖くて、動かなかった手足がコートに入っても自由に動くようになった。
想いを届けることができなくて、果てしなく遠く感じられた11、89mは。
こんなにも小さなコートだったのか。と部員を相手に玉を打ち出しながら感じるのだった。
そして、練習が終ると。
「一つ目の交差点で待ってるね。大ちゃん。」
こそっと、一緒に帰る約束をささやくまおがいること。
相変わらず、堂々と付き合っています!とは宣言できないけれど、
心を満たすものがあれば、それでいい。
「愛してるよ。まお。」
背中についた髪の毛を払うふりをして、ちゅ。と頬にくちづけた。
ふたたびきらきらと輝きはじめた、俺の青春。
無名のわが校は、連勝しているチームに圧倒され、最後は迫力負け。といった様子で敗退してしまう。
「まだお前たちには来年がある。俺も本気でやってみたい。と思わせてくれたよ。」
悔し涙を流し、しゃくりあげる馬場とまおの背中を撫でながら、なだめた。
今までは、楽しければいいんです。という空気が流れていたメンバーも、本気で悔し涙を流し、真剣に練習に打ち込むようになった。
弱小テニス部、の別称を持っていた部も、今回の全国進出で見直され、入部希望も後を絶たない。
差し入れだよ~。と呑気な声をあげて、薙が遊びにくる。
誰だ?と、不審がる部員たちに、「昔のダブルスを組んでいたときの相方だ。」と説明するのにためらいを感じない。
木陰の下では、相変わらず「ちょっと息抜き~。」と言いながら、タッキーがサボりに来ている。
倉庫の裏では、馬場が同級生から告白され、オッケーしたんだってさ!と噂が飛び交っている。
「俺っちも、幸せになろうかな。と思って。」
まおに、たった今コクられたばかりらしい女の子のシャメを見せ付けている。
・・・まあ、冷静に見ても、馬場はいい男だ。
外見は言うまでもなく。
手を出しすぎず、さりげなくまおを支え。
甘えて、はしゃいでばかりなのかと思えば、ドキっ!とするぐらい真剣な顔も持っている。
今まで彼女がいなかったほうが不思議なぐらいだ。と噂に混じれば、
同じ中学だったらしい部員が「馬場はまおにベタ惚れだったからなあ。」などと、恐ろしいことを言ってくれる。
よかった。
まおが馬場の男気にほだされる前で。
などど内心胸を撫で下ろしながら、仲間と談笑しているまおを盗み見る。
まおとの出会いによって、少しずつ全てが変わってゆく。
「はいっ!次っ!」
「ういーっす!」
コートに入って、打ち出したボールを馬場が打ち返してくる。
「はいっ!次っ!」
「はいっ!」
しっかりとボールを受け止めたまおが俺に向かってスマッシュを打つ。
ぽーん。ぽーん。とボールが地面を打つ音が心地よく響く。
何より変わったのは。
傷つけることが怖くて、動かなかった手足がコートに入っても自由に動くようになった。
想いを届けることができなくて、果てしなく遠く感じられた11、89mは。
こんなにも小さなコートだったのか。と部員を相手に玉を打ち出しながら感じるのだった。
そして、練習が終ると。
「一つ目の交差点で待ってるね。大ちゃん。」
こそっと、一緒に帰る約束をささやくまおがいること。
相変わらず、堂々と付き合っています!とは宣言できないけれど、
心を満たすものがあれば、それでいい。
「愛してるよ。まお。」
背中についた髪の毛を払うふりをして、ちゅ。と頬にくちづけた。
ふたたびきらきらと輝きはじめた、俺の青春。