「わあっ!ちょっと買いすぎちゃったね~~!」
「誰がこんなに食べるんだ?いくら育ち盛りと言えど・・・。」

うきうき!と音がしそうなぐらいに足取りの軽やかなまおが、カートを押しながらたくさんの食材をポンポンとカゴに投げ入れてゆく。
ここのところ、根をつめて馬場と練習に励んでいたので、ゆっくり二人で買い物するのも久しぶりだった。
なんだか、あまやかなデートのようで、嬉しそうに「これも美味しそう!あ、新商品だ!」などど瞳を輝かせてカートを押しているまおの後姿を眺めるだけで、心が和んだ。

買い込んだ食材を袋につめ終わってから、おのおの両手がふさがってしまうことにやっと気がついて。

「先生も半分手伝ってね。」
「俺は現役引退してるからな。お前と同じように食ってたら、あっと言う間にメタボだよ。」

きょん!と俺の顔をみたまおが、ぷぷぷっ!と噴きだす。

「ええっ!?先生がメタボって想像つかないんだけどっ!!」
「そりゃ、コントロールしてるからだよ。」

腕の筋肉を確かめるように、ぺしぺしと叩かれ、そのままくるん!と腕を絡めとられた。

「・・・まお?」

暗い夜道で、スーパーの袋がカシャカシャとうるさく音をたてる。
誰かに見られてはいないか。と焦って周囲を見渡していると。

絡めとられた腕に、更に重みを感じた。

「・・・しあわせ。」

そこには。
腕に頭を乗せて、蕩けるような笑みを浮かべたまおがいた。

「・・・ああ。」

こんなふうに微笑むまおを見た瞬間。

何だか全てがどうでもよくなって。

ただ腕の中に抱き締めたい。という感情だけしか残らなかった。