「よっしゃあっ!!都大会突破!」

試合終了の合図とともに、二人のもとに部員のみんなが駆け寄る。
みんなにもみくちゃにされながら、向日葵のように眩しい笑顔で笑っている。
かと思えば、すいっと、視線を投げかけられてドキン。と鼓動が跳ね上がる。
「ね?先生?」と、訴えかけるようなすがりつくような視線だと思ったのは一瞬で、
すぐにまた向日葵のような笑顔に戻るけれど。

今まで、予選突破しか考えていなかった頭に、いつぞやの約束がよぎって、どうしようもなく落ちつかなくなった。

「何考えてんのかわかんないから、優しいけど苦手。なキャラじゃなかったのかよー・・・。」

どうも、まおと出会ってから感情をコントロールするのが下手になったと思う。
それとも、コントロール不能なほどの感情が今までなかったのか。

「こういう時って、経験は却って邪魔をするのかもな。」

具体的なあれやこれ。を想像してしまうから。
・・・ってゆーか、そもそも手を出す。ってどういう意味かわかってんのか?まお。

あまりにも、さらり、と告げられた約束に今更ながらハタ。と気がつく。

「や。でも、高校生だもんなー・・。普通は知ってるよなあ・・・。でも、テニス一筋だったらなあ・・・。」

一体誰にしているいい訳なのか。

あの澄んだ瞳が俺だけを見詰めて、腕の中で頬を上気させているところを想像するだけで、
胸の奥がきゅんと締め付けられる。

「あのさ・・・。まお・・・。」

声を掛けようとするけれど、言いよどんでしまう自分が情けない。

まおが、息を弾ませながら、パタパタとみんなの輪から外れてくる。

「あのねっ!先生。今日はこのまま先生の家に寄ってもいい?」
「あ。うん・・・。そうだな。お祝いしなくちゃな。」

揺れ動く俺の心なんて、あっという間に飛び越えて、心の真ん中に落ちてきた。
そう。まおの願いはあくまで俺に全国を見せてあげたい。

ただ、それだけなんだから。