まおとコスモス畑に出かけた。

台風の影響で、茎がなぎ倒されてしまっていたけれど、可憐な花は力強く咲いていた。
秋風にひらひらと気紛れに揺れる花は、花びらの可憐さとは裏腹にとてもたくましい。

「・・・・あ。ちょうちょ。」
「ほんとだ。・・・羽根が折れちゃってるね。可哀想。」

コスモスの花びらに必死でしがみつくちょうちょ。
パタパタと羽根を動かすたびに、模様の違う裏表がうつろう。

「・・・あっ!危ないっ!」

強い風がざあっと吹いて、ゆらり。と茎が大きくゆれる。

片方だけ羽根の折れたちょうちょは必死に踏ん張るけれど、ぽたり。と地面に落ちてしまった。

「可哀想だけど・・・。」
「うん。飛べないちょうちょは生きていけないよね・・・。」

そっと花の上に乗せてあげるけれど、この子の寿命が短いことがわからないほど子供ではなかった。
大ちゃんの指先が、ちょうちょの羽根をそっと撫でる。

「・・・なあ。お前ってちょうちょの羽根みたいだな。」
「・・・え?」

ちょうちょ。と言われたのは初めてだ。
ひらひらと気紛れに舞っているように見えるからだろうか。

「表と裏で全く違う表情を持っている。どちらも美しくて魅力的で。でも、片方でも欠けてしまうと飛ぶことができない。」

俳優でも、デザイナーでも同じ浜尾京介。
どちらも魅力的で、どちらのお前も好きだよ。

大ちゃんの瞳が優しく包み込んでくれる。

「些細な傷でも、バランスを崩して飛ぶことができない・・・。」

ぎゅ。と後ろから抱き締められた。

「だから、自分のこと大切にして元気でいるんだぞ。でないと、俺も飛べなくなっちまう・・・。」
「・・・うん。わかった。」

ぼくたちは、ちょうちょの羽根のようだ。
どちらが欠けてもバランスを失って飛ぶことができない。

「大ちゃんも・・・。元気でいてね。」
「・・・ああ・・・。」

抱き締めてくれた腕を、ぎゅっと力を込めて抱き締めかえした。