ピピピピピ・・・。

3つ目の目覚ましが鳴る。
布団の中から腕だけ出して、ぱちん!と止める。

起きてしまえば平気なのだけど、大ちゃんのむくもりに包まれながらゆったりと目覚めることに慣れた身体には、
眠りから一気に叩き起こされる目覚ましというものは、なかなかに暴力的なものだなあ。と思う。

「はいはい。起きますよ。」

誰に言うでもなく、3つの目覚ましをベッドの隅に追いやった。


ベッドから這いだすと、素足にひんやりと冷たいフローリングの感触。

わずかに眉をひそめて、ストーブに火を入れる。

テレビをつけると、耳慣れない異国の発音が流れてくる。

「今日も寒くなるのかな・・・?」

お湯の沸く音を聞きながら、外を眺める。


澄み切った青空には、白い雲がのどかに浮かんでいる。


イスの上に丸まって、両手でカップを包む。

こくん。と気道をあったかいコーヒーが流れてゆくと、少しだけ寂しさが和らいだ。


「さて。今日もがんばりますか。」




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ピピピピピ・・・。

3つ目の目覚ましが鳴る。


「わーった。わーった。起きるよっ!!」

心配性のまおが、おれがいなくてもちゃんと起きれる??と、留学前に置いていった3つ目の目覚まし時計を止める。
3つの目覚ましを全部布団に包んで、再びうとうとと眠りに落ちる。

ちゃんと、起きたからな。
二度寝はまた別だかんな。

誰ともなしにいい訳しながら目を閉じるけれど、「大ちゃんっ!」とプリプリしながら布団をひっぺがえされるまおが浮かんできてしまって、どうにも安眠できない。

「わかったよ。気持ちのいい朝に寝坊してたら勿体ないんだろ?」

日常を大切に生きるまおが買い揃えたどっしりとした陶磁器の丸いフォルムを眺めながら、コーヒーメーカーをセットする。
真っ白い角皿に、厚切りのトーストとベーコンエッグ。
盛り付けるだけのカット野菜を添えると、立派なカフェモーニングといった感じだ。

「見た目。って大切でしょ?いつもと同じもの食べてても、食器とか盛り付けにこだわるだけで、すっごくリッチな気分になれる。」

料理をするのは好きだったけど、男の一人暮らし、ボリュームと栄養があれば、それでよし。
だった俺の作った料理をぱぱっ!とまるで魔法にでもかけたみたいに美しく盛り付けて、どこのレストランだっ!?って雰囲気にいつも変えてくれた。

「今日も、いい天気だなあ・・・。」

素足に感じるフローリングはちょっぴり冷たいけれど。
秋晴れの空は、どこまでも澄み渡っていて、高い。
きまぐれに浮かぶ雲が、ほわほわと漂っている。

世界時刻を表示させた時計では、まおはもう眠りについているころだろう。

「さて。ちょっくら外の空気でも吸ってきますか。」

まおが教えてくれた早起きの楽しみ方。

まお、どんな夢見てるのかなあ?などと、のんびり思いを馳せながら、人気の少ない公園を散歩するのだった。