夜中に鼻先をくすぐるタバコの香りで目が覚めた。

暗闇にぽうっと浮かぶ小さなともし火。

嫌いだったはずのたばこの光を見つけて、ほっとする。



「・・・綺麗ですね。」
「起きてたのか?嶋。」

外川さんが、ゆっくりと煙を吐き出しながらこちらを振り返る。

「いえ。今、目が覚めたところです。」

もそもそと布団に包まったまま異動して、彼の首に腕を回した。

「・・・どした?」
「ん・・。タバコの火に見とれてました。」

本当は、タバコを見詰める外川さんの瞳に見とれていました。

「・・ありがとな。嶋。」
「・・どうして、ですか?」

ふうっと吐き出した煙を見詰めながら、ゆっくりと僕の腕を抱き締める。

「俺さあ。どっかであの時の火事が忘れられなくて。
ただの過去だとか言いながらも、タバコの火を見てると、あの日に戻れる気がして。
暗闇が怖くて、この明かり見てたらほっとするんだよな。
煙吸ってると、自分が生きてるんだ。って実感できたんだ。
・・・って、わけ、わかんねー・・・。」
「・・・・。」

ぐしゃぐしゃと外川さんが頭をかく。

「とにかく逃れないような感覚で吸ってたのが、嶋と出会ってから幸せを噛み締めるために吸うタバコ。になったんだよ。」


「お前と出合えてよかったよ。」

前を向いたまま、後ろ手にくしゃ。と僕の頭を撫でてくれる。


「・・・・はい。」


随分と柔らかな瞳をするようになったなあ。


と、思いながら。


とんでもないうぬぼれだとはわかっているけれど。


「嶋のお陰だよ。」と、外川さんが言ってくれるから。



ちょっとだけ、信じてもいいかな??



僕が、貴方を癒していると。





--------------------------------

暗い部屋の中で、タバコを吸うシーンが多く、印象的だったなあ。と思って^^