大ちゃんってさあ。縫い物上手?」
「・・・なんだ?いきなり。」

トントンと柔らかなタッチで僕の背中を叩く指先に、問う。

「ねえ。上手?」
「まあ、普通の成年男子程度には。」

「・・・だよね。ボタンとかも綺麗に直しちゃうもんね。」
「まおだって、指先器用じゃねーか。」

「うん・・。でも、僕のとは違うんだよね。大ちゃんって。」


オズの魔法使いのかかしは、空っぽの中身を嘆いていた。
知恵と心を埋めてくれてくれるものを探して旅していた。

僕のカラダは大ちゃんがくれた詰め物でいっぱいだ。
ふわふわだった詰め物が、大ちゃんのくれる優しさや愛情でいっぱいになってぎゅうぎゅうになった。

綻びかけたならば、またたくさんの愛情を降り注いでくれて、ちくちくと縫い合わせてくれた。
ほどけかかった糸は、ほつれてしまうことなく細やかな気遣いでまた修復される。


「・・だから、ずっと好き。なんだよね。」
「・・・なんだ?それ。ボタンをつけるのが上手だったら、惚れるのか?」

「・・・うん。まあ、そんなとこ。」


自分の持ち物、をまめにメンテナンスして大切にする大ちゃん。

僕のことだって、ふらふらとしていれば、気持ちがほころびきってしまう前にたあっぷりの愛情を注いで捕まえていてくれる。

ぎゅうぎゅうに詰め込まれた大ちゃんの愛情は、ずっしりと重くて心地よい。


・・・ほら。こんなふうに。


「そこだけかよ。」
「・・・ううん。全部好きだよ。」


唇を重ねながら、体重をかけてきた大ちゃんを両腕で抱き締めた。



僕は、オズのかかし。


大ちゃんだけの、かかし。


軽かったわら人形は、大ちゃんと出会ってぎっしりと詰め物の入った立派なかかしになりました。




おわり。