まおが留学を終って、ぐらいの時間軸で読んでください^^






「大ちゃん。また筋肉ついたんじゃない?」
「・・・ん?ああ。舞台の稽古入るとな。やっぱ、体力勝負だからな。」

まおが、じーっと、俺の着替えを見つめている。

「・・・ねえ。おれ、大ちゃんより、一日だけ早く死にたいな。」
「・・・なんだ?それ。」

時々、まおの発想は飛躍していてわからないことがある。

「長生きするんじゃなかったのかよ。・・・それとも、一人残されるのが寂しい?」
「・・・じゃ、ないけど。」

まあ、俺としてもまおを残して先に、というのは年齢差からいって自然の摂理だとは言え、心残りで成仏できなさそうだけど。

「あのね。おれ、鍛えてないとすぐに筋肉落ちちゃうでしょ?最近、デザインの勉強のほうばっかで、また痩せちゃったな~。と思って。」
「そうだな。ま、抱きかかえるには、ちょうどいいけど。」

「・・・おじいちゃんになった大ちゃんのこと、抱きかかえられるかなあ?って思ったら、無理だな、って思って。
でも、誰かに頼むなんて・・・。おれがいるのに、他の誰かが大ちゃんに優しくするなんて耐えれないし。」
「・・・世の中の嫁さんたちは、みんな旦那さんのこと、抱きかかえたりしてないと思うぞ?」

「だからだよ。おれ、男なのに・・・。そんなの情けないじゃん。
みんな、平気なのかなあ?心配じゃないのかなあ??
だって、若い体力ある子に大ちゃんがでれっと鼻のばしたりしてたら、耐えられないよ。」
「・・・ばーかっ。」

本当に、まおは面白かわいい。
そりゃあ、でれっしないか。と言われれば、おじいちゃんになった時の自分のことまで今から責任はもてない。
でも、仮にでれっとしてたとしても。
それは、まおを愛している気持ちが薄らぐ。ということではない。

「そりゃお前。綺麗な人見たら思わず振振り返るけど、いちいちそこで恋に落ちないだろ?
そんなことしてたら、この業界一日何回恋に落ちだって間に合わないだろ?
まおを愛する気持ちは、そんなことで変わったりしないさ。」
「・・・・そう?」

不安げに俺をみあげてくる。

「・・・っつーか、どうしてそんなにかわいいんだっ!お前。」

そのころには俺だってしわしわよぼよぼの爺さんだ。
いくら、ダンディーに年を重ねたとしても、まおのほうが9歳も若いのだから俺のほうこそ浮気の心配をしなければならないだろう。
フツウは、世話をやくのが面倒臭い。と思いこそすれ、他の人が優しくするなんて嫌。
などどやきもちを妬くだろうか。

一分一秒狂うことなく、人生一緒に終りたいね。って夢物語。を描くことはあるかもしれないけど。
一日だけ早く死にたい。なんて初めて聞いたよ。

「それにね。大ちゃん待たせるの嫌だもん。今回だって、寄り道してたおれのこと待っててくれたでしょ?
だから、今度はちょっとだけ先にあの世に行って、待ってたいの。」
「・・・わかった。じゃあ、待ってろよ。」

「・・・うん。待ってる。これで、おあいこだよね。」

ふふふ。と満足そうに微笑むまお。

未来設計図なんて、描いたところでそのとおりになるとは限らない。

だけど、描くことで今のまおが幸せになるのならば。

いくらでも、架空の設計図を描こう。