「・・・すきだっ!!!」
「・・・・はっ!?」

綺麗な瞳がまあるく見開かれて、あんぐりと口を開けている。
美形は、びっくりしてても美形なんだなあー・・・。

などど、ぼんやりした頭で考える。

「わわっっとっ!!あぶないっ!!」

サアアーーー。と彼の手に握られた薬紙から薬品がこぼれ落ちそうになって我に返る。
とっさに受けとめて、重なりあった掌が熱い。

意外とあったかいんだなあー・・・・。

外見だけ見ると、整いすぎて血が通っていないんじゃないか。って感じてしまうのに。


「ちょ。どさくさに紛れて、何してんの?お前。」
「あ?あー・・・。愛の告白??」

「何で、疑問系なんだよっ!!」
「や。だって、自分でも意識してなったから、びっくりしてる。」

綺麗な指先だなあ~~。と眺めているうちに、ついつい言葉に出てしまったのだ。

ほとんど初対面のコイツに。


「告白って、お前、俺のこと何も知らないだろーがっ。」
「ん?うん・・・・。ま、一目惚れってやつかなあー・・・。」

男に、しかも同級生にいきなり告白なんてされて、うざっ。とか、きもっ。って反応が返ってくるのかと思えば、
意外と誠実に答えてくれる。

「やーっ、お前っていい奴だなあ?」
「どこがだよっ。別に俺、お前に対してなんもしてやってねーけど。」

「ふつーにしてくれるところが、いい奴だよ。普通、いきなり男に告白とかされて、気持ち悪いとかヒクだろ?」
「あー・・・。ありがたくないことに、慣れてるからな。」

そっか。これだけの美貌の持ち主なら、男女問わずに告白受けまくり、の人生だったってことだな。

「そう言えば、お前ってハーフ?」
「いや。生粋の日本人だけど。名前なんて、甲斐正宗だし。」

「・・・まじ?」
「・・・・まじ。似合わねーとか、名前負けとか思ってるだろ?」

「や。意外は意外だけど・・・。そっかあ~~。」

華やかな容貌に比して、真面目そうな性格は、名前にぴったりだ。

「同じ学内にいたのにな~~。なんで、今まで気が着かなかったんだろー・・・。もったいない。」


実習は3回生から始まる。

つまりは、きっちり2年間も彼と同じ学内にいたというのに。
名前の順でクラスわけがされているので、和田の俺とは全く接点もなかったというわけだ。
せめて、ゼミだけでも同じだったらよかったのに。

今更ながらに、自分の選択を悔やむ。

実習先は、自宅から近いところ、という基準で学校が指定してきたので、彼とペアになったというわけだ。


「・・・って、ことは、ご近所さんなんじゃんっ!!!」

ハタ。と思いついて、彼のほうをばっと振向くと、

「嫌なこと、思いつくな~~。」

と、心底迷惑そうな顔をする。
もともと、急に湧き上がってきた感情で、受け入れてくれる云々とか考えていたわけではないから、
どこまでも前向きで、突っ走るだけだ。
眉を寄せた顔も、また色っぽいな~~。などど、不謹慎なことを考える。


「じゃあ、今日一緒に帰ろ?どこの駅??メシ食って帰る??」
「だから、まだ約束してないっつーのっ!!」

さらさらと薬剤を計りにかけながらつぶやく横顔は、無愛想だけれども簡単にはオトサレナイ孤高」な美しさ。
という色気がある。

「これから、二週間寝食共にする仲だろ~~。」
「お前と共にするのは、実習であって、寝食ではないっ!一緒に寝る覚えも、メシを食う義理もないっ!」

「や。メシぐらい一緒に食おうよ。一人で食堂は寂しいじゃん。・・・つーか、どこに食堂あるんだ?」
「オリエンテーション聞いてなかったのか?別館の入口だよ。」

やれやれ。と大きくため息をつきながら教えてくれる。
やっぱ、なんだかんだ言って優しいよなーっ。お前。

「あ、それ、こっちの薬剤から先に調合しないと、微調整きかないぞ?」
「え?あ。そうんなんだ。・・・ありがとう。」

つれない返事をするけれど、告白以外の部分に関しては素直でやっぱりやさしい。

「・・・ますます、惚れたな。」
「・・・はあっ!?」

「実習終ってからも、お前がオッケーくれるまでコクり続けるからよろしくっ!」
「・・・・なんだよ。それ・・・。」

うんざり、と肩を落とすけれど、初めて会ったときに比べて、二人の間の空気はやわらかなものになっていた。

「薬剤部はあと4年もあるからなーっ!!じっくり落とさせてもらうよ。」

自分の容姿が彼に比べる価値もないことなんて、百も承知だ。
引く手あまたの彼が、俺なんか眼中にないことも。

それでも、せっかく一目惚れをするほどの相手に出会えたのだ。


「よしっ!明日もがんばるぞーっ!!!」


「おっ。気合い入ってんなあ・・・・。」

遠くのほうから、何も知らない指導者さんが声をかけてくれる。

「・・・あ。はいっ。もう、やる気満々ですっ!」

ベクトルの違うやる気、だったのだけれど。


実習を終えての評価表には、意欲に二重丸がついていた・・・・・。


ま、もちろん、甲斐に尊敬してもらおうと、めっちゃ勉強もして行って、レクチャーしたけどねっ!!


恋愛、万歳!!



----------------------------------------------


・・・で?

や。かきたかっただけ・・・。

長い妄想でした(笑)

並んで何か話ししているのを、ちょこっと見かけただけで、声までは聞こえなかったけど、
楽しい妄想ワールドをこんなふうに繰り広げておりました~////