「やっ・・・・っとっ!!!できたっ!!!」

愛するお前のためならば。

と言えば聞こえはいいが、正直あまり人に見せたい努力ではない。


美しい名月を眺めながら、「まおにも見せてやろう。」と写真を撮った。

このまま贈るのも愛想がない。

もともと、加工したりするのは得意でないけれど、まおはこういうことが大好きだ。

友人とのプリクラに落書きしてみたり、グラデーションをかけてみたり。

それだけでは飽き足らず、まおの残していった俺達のツーショの入ったフォトフレームが並んでいる。



「喜んでくれるかな・・?」

まおのセンスには適わないかもしれないけど。
俺の愛情は伝わるだろう。

そう願いながら、必死でススキやウサギをデコレーションして、縁をカラフルな模様で飾る。


「・・・こんなもんかな?」


秋の気配を感じながら、虫の音色を聞きながら作成したはずなのに、じんわりと汗をかいていた。


「・・・なんか、こんなに熱中したの久しぶりだな。」

まるで、小学生の頃に時間も経つのも忘れて工作を作っていた頃のようだ。


まおのように、決して美しくカッコいい姿ではないだろうけど。

悪戦苦闘しながら作った画像には、不器用ながらも伝えたい愛情がいっぱい詰まっているような気がして。


「・・・なんか、愛おしいな。」


作品を作り上げる。ってこんな気持ちなのか。


少しまおの気持ちがわかったような気がした。



「送信っ!と・・・・。」



画像を送り終えて、ふたたび月を見上げる。



「今頃、そっちは朝なのかなー・・・。忙しいかな?まお。」


この時間帯の返事は期待していないけれど、やっぱり気になってしまって携帯をじっと見詰める。


ぴかっ!


着信を知らせるランプが灯る。


俺にとっては満月よりも魅力的な、一等星に匹敵する輝き。


「ありがとーっ!!こっちで名月見れると思ってなかったから、嬉しかった!!
ふふふ。大ちゃん、頑張ってくれたんだよね?ありがとお!」


短いけれど、朝のバタバタした時間に時間を裂いて返事をしてくれたのかと思うと、じんわりとくる。


「いってらっしゃい。まお。」


シリアルを片手にスマホをいじってくれたのだろうか。


目を閉じれば、爽やかな街並みの石畳を歩くまおの姿が見えた。