「今年は、随分と秋が来るのが早いな。」
「そういえば、そうだね。」

うだるような夏が終わり、朝晩の気温の変化にほっとするのが常だった。
ギラギラとエネルギッシュな夏が終わり、過ごしやすい秋がやってくると少し寂しいような気分になる。

夏が嫌い。というわけではないのだが、やっぱり体力を奪われない季節、というものはありがたいものだ。
特に、半分は体力仕事と言ってもいい俳優業界においては、打ち込みやすいという利点もある。

でも、今年に限ってはいつまでも夏が終らなければいいのに。

どこかで、そう願っている自分がいる。

なのに、今年に限って夏が足早に去ってゆく。

「いつも、この時期って残暑見舞い・・・とか言いながら、全然残暑どころか、猛暑だろ~。とか思いながら
挨拶してたのに。」
「ん・・・。そうだね。」

手にしたアルコールが、いつの間にかビールより、ワインのほうがしっくりとなじむようになった。

「なんかさあ。どうしてこうも秋ってもの悲しくなるんだろうな。」
「でも、こうやってゆっくり季節を感じられるのって、いいよね。」

理由なんてわかっている。

秋がくれば、まおは海を隔てた遠くへと旅立ってしまうから。
秋がもの悲しいのではなく、切々と迫って来る記憶まで連れてくるからだ。

がむしゃらに駆け抜けてきた6年間。

季節などくっくり感じる暇などなかった。
仕事を離れれば、年中情熱的に求め合った。

お互いじっくりと自分の未来を見詰めて、ゆったりとする時間を過ごすことで感じることのできた季節感。

それは、奇しくもまおがこの腕から離れてゆく、という実感でもある。


「・・・たばこ、いいかな?」
「・・今?」

カタン。とイスを鳴らしてベランダに向かう。

煙を嫌うまおのために、たばこをくゆらす代わりに乾杯に付き合うようになった。

だけど、今は・・・。

自分を傷めつけるだけだよ?と何度も注意されたまおの心配顔を思い浮べながら、
少しだけこの苦い煙に逃げたい気分だった。



-----------------------------------------

ちょっと暗いねWW

最近夜になると、蛙のやかましい鳴き声から、鈴虫の鳴き声に変わってきたんだよね・・・。

なんだか、やっぱり寂しい気分になるんだよね。
過ごしやすい秋が来て、ほっとするはずなのに。

このタイミングで飛び立つまお。
だから、大ちゃんも必要以上に寂しさを感じているかもね。と思いました。