いくら粒ぞろいの新入部員といえども、上下関係の厳しい運動部で、入部そうそう試合に出れるわけではない。
ただ、うちの先輩共は、のんびりしているというか、ガッツがないというか。
よく言えばお人好し。悪く言えば向上心がない。
「勝てる奴が出ればいいと思うけど。」
なんて、のほほんとしたキャプテンの一言で、満場一致といった雰囲気で、適正をみて選手を選ぼうということになった。
「あっ。俺、試合に出るなら、絶対にまお君とダブルスがいい。他はやんない。」
「あっ。またそういうわがまま言う。馬場っち、うまいのに勿体ないよ。チャンスがあるなら、シングルでもなんでもやんなきゃ。」
「だって、俺まお君以外とするの興味ないもん。」
「・・・そういうの、贅沢っていうんだよ?才能あるのに、もったいない。」
季節は、夏にさしかかろうとしていた。
毎日みんな汗だくでコートの中を走り回っている中、この二人の温度はなんだか周りとずれている。
上級生は、ビジュアルからテニス始めました~~。
楽しくできたら、それで満足です。という、のほほんとした雰囲気だし。
新入部員は、そこそこ実力のある奴しか最終的に残らず、一年から名のある試合に出場できるチャンス。
とばかりに若干血走った目で、ガツガツ練習している。
なのに、この二人はあくまでマイペースというか、なんというか・・・。
「じゃあ、俺がテニス辞めたら馬場っちも辞めるの?」
「どうろうな~~。その時になってみなきゃ、わからないなあ・・・。」
まおがいないとやんない。と言っているかと思えば、ズバリ、と指摘するとふわふわと核心をはぐらかす馬場は、本心が見えない。
「・・・苦手なタイプかもな。」
ぽそり、と独り言をつぶやくと、
「お前もだよ。」
と、相槌を打たれて、驚いた。
「今、馬場のこと、読めない奴。とかって思ってただろー・・・。
それ、お前にそのままそっくり返すよ。誰にでも優しくて、怒ったとこを見たことのない渡辺先生。
女子達が噂してたぞ?優しくて、笑ったところがかわいい。けど、何考えてるのか、わからない。って。」
「教師だからな。誰にでも平等に。理性を持って接する、のが仕事だろ?」
「お前のは、仕事っつーか・・・・。笑顔の下に、バリケードを張ってるみたいだけどな。」
「ほっとけ。こういう性分だ。」
「・・・まっ。あまり息苦しくならないように、しろよ。」
「わかってるよ。」
わかってるから、誰にも深入りしないように。
傷口が開いてしまわないように、笑顔でコーティングして。
なのに、この二人はそんな俺の努力なんて無視して強烈にかき乱すんだ。
「幼馴染か・・・。」
幼いときから側にいるのが当たり前で、いつまでも、いつまでも同じ道をすすむことを疑いもしなかった。
「今頃、どうしてるかな・・。アイツ。」
なかったことにしようとしても、消し去ることのできない記憶。
ズキン。と左肘が痛んだような気がして、ぎゅっと押さえた。
ただ、うちの先輩共は、のんびりしているというか、ガッツがないというか。
よく言えばお人好し。悪く言えば向上心がない。
「勝てる奴が出ればいいと思うけど。」
なんて、のほほんとしたキャプテンの一言で、満場一致といった雰囲気で、適正をみて選手を選ぼうということになった。
「あっ。俺、試合に出るなら、絶対にまお君とダブルスがいい。他はやんない。」
「あっ。またそういうわがまま言う。馬場っち、うまいのに勿体ないよ。チャンスがあるなら、シングルでもなんでもやんなきゃ。」
「だって、俺まお君以外とするの興味ないもん。」
「・・・そういうの、贅沢っていうんだよ?才能あるのに、もったいない。」
季節は、夏にさしかかろうとしていた。
毎日みんな汗だくでコートの中を走り回っている中、この二人の温度はなんだか周りとずれている。
上級生は、ビジュアルからテニス始めました~~。
楽しくできたら、それで満足です。という、のほほんとした雰囲気だし。
新入部員は、そこそこ実力のある奴しか最終的に残らず、一年から名のある試合に出場できるチャンス。
とばかりに若干血走った目で、ガツガツ練習している。
なのに、この二人はあくまでマイペースというか、なんというか・・・。
「じゃあ、俺がテニス辞めたら馬場っちも辞めるの?」
「どうろうな~~。その時になってみなきゃ、わからないなあ・・・。」
まおがいないとやんない。と言っているかと思えば、ズバリ、と指摘するとふわふわと核心をはぐらかす馬場は、本心が見えない。
「・・・苦手なタイプかもな。」
ぽそり、と独り言をつぶやくと、
「お前もだよ。」
と、相槌を打たれて、驚いた。
「今、馬場のこと、読めない奴。とかって思ってただろー・・・。
それ、お前にそのままそっくり返すよ。誰にでも優しくて、怒ったとこを見たことのない渡辺先生。
女子達が噂してたぞ?優しくて、笑ったところがかわいい。けど、何考えてるのか、わからない。って。」
「教師だからな。誰にでも平等に。理性を持って接する、のが仕事だろ?」
「お前のは、仕事っつーか・・・・。笑顔の下に、バリケードを張ってるみたいだけどな。」
「ほっとけ。こういう性分だ。」
「・・・まっ。あまり息苦しくならないように、しろよ。」
「わかってるよ。」
わかってるから、誰にも深入りしないように。
傷口が開いてしまわないように、笑顔でコーティングして。
なのに、この二人はそんな俺の努力なんて無視して強烈にかき乱すんだ。
「幼馴染か・・・。」
幼いときから側にいるのが当たり前で、いつまでも、いつまでも同じ道をすすむことを疑いもしなかった。
「今頃、どうしてるかな・・。アイツ。」
なかったことにしようとしても、消し去ることのできない記憶。
ズキン。と左肘が痛んだような気がして、ぎゅっと押さえた。