「いたたたたっ。ちょっと容赦ないなあ。馬場っち~~。」
「愛の鞭じゃんか。しっかり柔軟しておかないと、怪我するぞ?まお君。」

「だからって、そんな全力で押されたら骨折れるよ。」
「これぐらいで折れるようなら、もっと鍛えなきゃね~~。」

「いででででっ!!!死ぬって!!!」

本気で怒った浜尾が、馬場に肘鉄を食らわせている。

のどかな放課後。
授業の終った生徒がぽつりぽつりと集まってきて、思い思いにストレッチを始めている。

クラスも一緒で、部活も一緒。とくれば自然と仲良くなるのだろうか。
この二人はいつもセットだ。

「相変わらず仲がいいな。お前らは。」

ほほえましい光景のはずなのに、ざわ。とした心のざらつきを覚えながら笑顔を浮かべて声をかける。

「そりゃあ。だって、オムツはいてた頃からの仲だもんなっ!!
あっ。先生内緒ですよ~~。俺のファーストチューの相手は、コイツです。」
「そんな、記憶にないような頃の話、事実に入らないだろ?」

「いやいや。うちにちゃんと証拠写真があるぞ?」
「げっ。マジ??」

「おう。今日見にくるか??なんなら、メシも食っていけよ。」
「あ・・・。うん。どうしよっかな。お母さん次第かなー・・・。」

俺から声をかけたはずなのに、あっという間に俺の入り込めない会話が展開されてしまう。


そう。これは、きっと嫉妬だ。


親友と呼べる存在。
一緒に上を目指そうな。と切磋宅磨できる存在。


相手のことを信頼しきって、毎日がキラキラと輝いていて。


未来は明るい、と信じて疑わなかったあの頃。


俺にだって、そんな時代があった。


自分の手で、壊してしまうまでは・・・。