「失礼しまーす。」

朝のミューティングが終って、コーヒーブレイクをしたり、
授業の準備をしたり、と思い思いに過ごしてる職員室に、
明るい声が響く。

ついつい心が弾んでしまうような、声の持ち主は浜尾だ。

「どした?何か用か??」

まさか。とは思いながらも、淡い期待を抱いて声をかける。

これが女子生徒ならば、朝から「先生に会いにきたんだよ~~。」とか、
「差し入れ~~。」とかって、手づくりのクッキーを持ってきてくれたりするんだが。

授業でわからないところがあって。という質問はないにしても、もしかしたら部活のことで・・・。
と、何か相談ごとかもしれない。


大急ぎで走ってきたのだろう。
はあ、はあ、と息を乱した浜尾は、キラキラと瞳を輝かせながら、ざっくり。と淡い期待を裏切った。

「あ。滝口先生知りませんか?」
「・・・ああ。滝口先生・・・。」

がっくし。と声に出てしまったのではないだろうか?
というぐらい、声のトーンが下がる。

「俺、今日日直なんで、日誌取りにきたんです。」
「ああ。そう・・・。また、帰ってきたら、お前が来たことを伝えておくよ。」

「ありがとうございますっ!!」

元気いっぱい折り目正しくお辞儀をして、職員室を出てゆく。


深入りするな。と頭の中で警告が鳴るけれど、惹かれることを止められない。

そんな魅力が彼にはあった。