「へえ。今年は粒ぞろいだね。」
「そうだな。当たり年。というのか、中学からやっているヤツが多いらしい。」
ここは都内の西に位置する比較的静かな環境に囲まれた都立高校。
歴史と伝統はあるけれど、学力も運動もバランスよく・・・。と言えば聞こえはいいけれど、
悪く言えば器用貧乏というのか、不良もいない代わりにずば抜けて目立つ子もいない。というのどかな校風の学校だ。
春のまったりとした風が吹く抜ける中で、先輩たちが能力定めのために、コートの中で新人相手に打ち合いをしている。
俺、渡辺大輔は、3年前にこの高校に新卒で赴任してきて、テニス部の顧問になった。
バリバリのテニスで進学しました。というわけではなかったのだけれど、学生時代にはそれなりに活躍していた。
まあ、前任の先生が転勤になってしまった。というタイミングもあったのだけれど。
グラウンドの片隅で、俺と一緒に生徒を眺めながら気分転換と称したサボりを決め込んでいるのは、剣道部顧問の滝口幸広。
俺よりひとつ年下だが、なかなかしっかりしていて、若い世代同士何かとくっついている。
学校、というものは、ベテラン先生に助けを求めることが多い分、同世代の仲間がいる。というのは、ほっとするものだ。
「へえ・・・。あの子、上手いな。瞬発力っての?がある感じ。」
「わかるか?」
「ああ。テニスの専門的なことはわかんねーけど、体のキレがいいっていうか・・・。」
漫画の影響だか、何だか知らないが、テニス部というのは結構人気がある。
運動神経云々というのは別として、単なる「かっこよさそう。」というビジュアルだけで入部してくる新入生も毎年わんさかいるのだ。
この時期の新入部員は30名を超える年もあるが、大抵一ヶ月もしないうちに見た目よりもハードな運動量とテクニックを要求されることに気がついてやめてゆくヤツが多い。
最終的に正式な部員として残るのは、せいぜい10数名で、
本当にできるヤツ。というのは、毎年ほんの数名。ってとこだ。
だから、この能力定め、の打ち合いで、心地よいボールの音が響くのは珍しい。
たいがいは、ラリーにもならないお粗末なものだったからだ。
その中でも、ひと際目を惹いたのが、滝口先生こと、タッキーも認めた濱尾京介。
中学からそこそこ活躍していたらしく、名前は聞いたことがある。
高等部と中学部が直接対戦をすることはないから、あくまで聞いたことがある、程度だったが。
「・・・へえ。彼が。」
自分の思ったコースに打ち込めなかったのか、悔しそうに唇を噛み締める。
粒ぞろい、の中でも格段に目を引く彼。
それは、単に技術的に上手い。というだけではなく、テニスへのひたむきな情熱というのか、真っ直ぐな想いというのか・・・。
忘れてしまった、忘れようと努力していた気持ち、を思い出させるせいだったのだろう。
「おっ。あの子も脚が速いんじゃねー?あれ、追いつけねーと思ってたわ。」
「アイツは、手首が強いのか??あんな強力なボレー、全くぶれずに返してるじゃん。」
テニスは専門じゃない。とか何とか言いながらも、しょっちゅう陣中見舞い。とか、日光浴だとか。
適当な理由をつけて、テニス部をしょっちゅう覗きにきているタッキーは、他の新人にも目をつけている。
・・・確かに。
粒ぞろい、で能力の高いやつは他にもいるのに、なぜか俺の視線は彼に釘づけになっていた。
「そうだな。当たり年。というのか、中学からやっているヤツが多いらしい。」
ここは都内の西に位置する比較的静かな環境に囲まれた都立高校。
歴史と伝統はあるけれど、学力も運動もバランスよく・・・。と言えば聞こえはいいけれど、
悪く言えば器用貧乏というのか、不良もいない代わりにずば抜けて目立つ子もいない。というのどかな校風の学校だ。
春のまったりとした風が吹く抜ける中で、先輩たちが能力定めのために、コートの中で新人相手に打ち合いをしている。
俺、渡辺大輔は、3年前にこの高校に新卒で赴任してきて、テニス部の顧問になった。
バリバリのテニスで進学しました。というわけではなかったのだけれど、学生時代にはそれなりに活躍していた。
まあ、前任の先生が転勤になってしまった。というタイミングもあったのだけれど。
グラウンドの片隅で、俺と一緒に生徒を眺めながら気分転換と称したサボりを決め込んでいるのは、剣道部顧問の滝口幸広。
俺よりひとつ年下だが、なかなかしっかりしていて、若い世代同士何かとくっついている。
学校、というものは、ベテラン先生に助けを求めることが多い分、同世代の仲間がいる。というのは、ほっとするものだ。
「へえ・・・。あの子、上手いな。瞬発力っての?がある感じ。」
「わかるか?」
「ああ。テニスの専門的なことはわかんねーけど、体のキレがいいっていうか・・・。」
漫画の影響だか、何だか知らないが、テニス部というのは結構人気がある。
運動神経云々というのは別として、単なる「かっこよさそう。」というビジュアルだけで入部してくる新入生も毎年わんさかいるのだ。
この時期の新入部員は30名を超える年もあるが、大抵一ヶ月もしないうちに見た目よりもハードな運動量とテクニックを要求されることに気がついてやめてゆくヤツが多い。
最終的に正式な部員として残るのは、せいぜい10数名で、
本当にできるヤツ。というのは、毎年ほんの数名。ってとこだ。
だから、この能力定め、の打ち合いで、心地よいボールの音が響くのは珍しい。
たいがいは、ラリーにもならないお粗末なものだったからだ。
その中でも、ひと際目を惹いたのが、滝口先生こと、タッキーも認めた濱尾京介。
中学からそこそこ活躍していたらしく、名前は聞いたことがある。
高等部と中学部が直接対戦をすることはないから、あくまで聞いたことがある、程度だったが。
「・・・へえ。彼が。」
自分の思ったコースに打ち込めなかったのか、悔しそうに唇を噛み締める。
粒ぞろい、の中でも格段に目を引く彼。
それは、単に技術的に上手い。というだけではなく、テニスへのひたむきな情熱というのか、真っ直ぐな想いというのか・・・。
忘れてしまった、忘れようと努力していた気持ち、を思い出させるせいだったのだろう。
「おっ。あの子も脚が速いんじゃねー?あれ、追いつけねーと思ってたわ。」
「アイツは、手首が強いのか??あんな強力なボレー、全くぶれずに返してるじゃん。」
テニスは専門じゃない。とか何とか言いながらも、しょっちゅう陣中見舞い。とか、日光浴だとか。
適当な理由をつけて、テニス部をしょっちゅう覗きにきているタッキーは、他の新人にも目をつけている。
・・・確かに。
粒ぞろい、で能力の高いやつは他にもいるのに、なぜか俺の視線は彼に釘づけになっていた。