「・・・なあ、京介。卒業したら、結婚しないか?」
「・・・えっ!?」
「もちろん、結婚式は海外で二人っきりで、になるだろうけど。お前さえよければ。」
やっぱり、未来は唐突に何がおこるかわからない。
そんなこと、考えたこともなかった・・・・。
「恥ずかしかったら、形にしなくてもいい。ただ、一生お前とパートナーとして生きて生きたいな。と思っただけで。」
「・・・・や。正直びっくりしすぎて、反応ができないよ。」
今年で俺も学生生活は卒業だ。
そろそろ就職活動をしなければ。とは思っていたけれど、具体的に彼との生活がどうこう。というところまで考えたことがなかった。
・・・ただ、このままお隣の住人同士のまま、近くで就職がみつかればいいなあ。ぐらいにしか思っていなかった。
「独立しようと思ってるんだ。会社のメンバーにも何人か声をかけてある。
俺が企画デサインして、お前が内装とインテリアを担当して。
・・・実は、営業は島津君にお願いしようかと・・・。」
「・・・えっ!?」
いつの間に、そんなに仲良くなってたの??
島津が彼女の話ばっかりするようになってから、俺の恋話は自然にしなくなって、彼と思いが通じ合ったことも話すタイミングを失ってしまったのだ。
彼との話は、聞き手に回ることが多かったから。
ん??そもそも、知りあいだったか??
「随分前にさ。お前の部屋の前で突っ立っていたから、お前に用事かな?と思って「留守だと思うよ。」
って声かけたら、「知ってます。」って言いながらずっと待ち続けてさあ。
もしかして、濱尾のこと好きなのかな?って一人で嫉妬してたんだ。
何回かそんなことがあって、「ストーカーか?」とかって、失礼なこと聞いてしまったんだよなあ・・・。」
バツが悪そうに、彼が笑う。
「そしたら、『お前の反対隣の彼女に一目惚れをしたんだけど、会うチャンスがなくって。』
って言うから、『多分恋人いるよ?何度か会ったことあるけど、いつも男の人と一緒だし。』って教えてあげたら、すっげー落ち込んじゃって可哀想だった。
なんか、悪いことしたなあ。って思って、会社の後輩と合コン用意してあげたりして・・・。」
「ちょっと、待って?それ、いつの話・・・??」
「んー・・・。お前が引っ越してきて、そんなに間がなかったと思うけど。」
ちょっと、待て。
じゃあ、俺が休んだ連絡を届けにきて、反対側のお隣さんに恋をして、玉砕して、渡辺さんの紹介で彼女ができた。ってこと・・・・??
「その島津君の彼女も人当たりがよくて、親身になって話しを聞いてくれるいい子なんだよな。」
・・・知ってるよ。散々ノロケ話聞かされてたから・・・。
「彼女も、島津君も一緒に働けたら楽しいだろうなあ。って言ってたし。」
もしかして、途中から気がついていたんだ。
俺の恋の相手は、美人な年上の反対隣の女性ではなく、渡辺さんだと言うことを。
わかっていて、静かに見守っていてくれたのかもしれない。
「・・・で、俺たちの関係は知っているんですか?島津は。」
最近は俺の学部が変わってしまったこともあって、すっかり顔を会わせなくなってしまった。
お互いに卒業制作に忙しく、プライベートで連絡を取り合うことも滅多になくなった。
「多分なんとなくは。彼と話をしたのは、最初だけだから。でも、彼女のほうから話してると思うよ?」
「ってことは、彼女さんは知ってるんですかっ!?」
・・ちょっと、それは恥ずかしいかも・・・。
「や、そんなはっきり話したわけじゃないけど、才能にほれ込んだ人間がいて、一緒に独立したいんだけど、同士を探してる。って話をしたときに、お前のことをどんな人間か訊ねられたんだ。
・・・まあ、安定した企業を辞めて、独立する限りは気になるよな。と思って色々話したんだけど・・・。」
ごめんな?って照れ笑いで前置きしてから
「お前の話するのが嬉しくて、ついつい調子に乗ってしまって。」
「・・で?」
なんだか展開が見えてきた気がする・・・。
「『ふふっ。その彼のこと、大好きなんですね。』って見透かされちゃったんだよ。」
怒る??って彼が俺の顔色を伺っているのが可笑しい。
うんと俺より年上で、何でもできて完璧な人なのに。
「・・ばれちゃったものは、仕方ないもんね。それに、みんな知っててくれる。っていうのは気がラクだし。
俺、人見知りだから、全く知らない人間ばかりのところで一からのスタートっていうのも不安があったし。」
「・・・そうだったな。」
島津ぐらい人懐っこくて行動力があれば、もっと早くに貴方に話かけれていたかもしれない。
だけど、俺のこの性格だからこそ、今がある。
運命にみせかけた、必然のヒトツ。
「じゃあ。考えて、くれるか?」
「・・・もちろん。俺も貴方の側でずっといたい。」
密かに彼の会社に就職できないだろうか?と探りを入れようと思っていたところだったのだけれど。
まさか、こんな形で仕事でもプラベーとでも共に生きることになるとは思わなかった。
「恋人としても・・・?」
彼が、まだ俺の顔色を伺っている。
「・・・NO。と言うわけが、ないでしょ??」
彼の左手をとって、薬指にちゅ。とくちづける。
「ずっと、ずっと一緒にいさせてください・・・。」
やっと、ふわ。と安心したように笑った渡辺さんに息もできないぐらい強く抱き締められた。
平行線をたどり、決して交わることのなかった扉は・・・。
今。
永遠に並んで歩む俺たちの決意として、仲良く並んでいる。
さあ。扉を開けて、新しい未来へと歩き出そう。
---------------完-----------------------
「・・・えっ!?」
「もちろん、結婚式は海外で二人っきりで、になるだろうけど。お前さえよければ。」
やっぱり、未来は唐突に何がおこるかわからない。
そんなこと、考えたこともなかった・・・・。
「恥ずかしかったら、形にしなくてもいい。ただ、一生お前とパートナーとして生きて生きたいな。と思っただけで。」
「・・・・や。正直びっくりしすぎて、反応ができないよ。」
今年で俺も学生生活は卒業だ。
そろそろ就職活動をしなければ。とは思っていたけれど、具体的に彼との生活がどうこう。というところまで考えたことがなかった。
・・・ただ、このままお隣の住人同士のまま、近くで就職がみつかればいいなあ。ぐらいにしか思っていなかった。
「独立しようと思ってるんだ。会社のメンバーにも何人か声をかけてある。
俺が企画デサインして、お前が内装とインテリアを担当して。
・・・実は、営業は島津君にお願いしようかと・・・。」
「・・・えっ!?」
いつの間に、そんなに仲良くなってたの??
島津が彼女の話ばっかりするようになってから、俺の恋話は自然にしなくなって、彼と思いが通じ合ったことも話すタイミングを失ってしまったのだ。
彼との話は、聞き手に回ることが多かったから。
ん??そもそも、知りあいだったか??
「随分前にさ。お前の部屋の前で突っ立っていたから、お前に用事かな?と思って「留守だと思うよ。」
って声かけたら、「知ってます。」って言いながらずっと待ち続けてさあ。
もしかして、濱尾のこと好きなのかな?って一人で嫉妬してたんだ。
何回かそんなことがあって、「ストーカーか?」とかって、失礼なこと聞いてしまったんだよなあ・・・。」
バツが悪そうに、彼が笑う。
「そしたら、『お前の反対隣の彼女に一目惚れをしたんだけど、会うチャンスがなくって。』
って言うから、『多分恋人いるよ?何度か会ったことあるけど、いつも男の人と一緒だし。』って教えてあげたら、すっげー落ち込んじゃって可哀想だった。
なんか、悪いことしたなあ。って思って、会社の後輩と合コン用意してあげたりして・・・。」
「ちょっと、待って?それ、いつの話・・・??」
「んー・・・。お前が引っ越してきて、そんなに間がなかったと思うけど。」
ちょっと、待て。
じゃあ、俺が休んだ連絡を届けにきて、反対側のお隣さんに恋をして、玉砕して、渡辺さんの紹介で彼女ができた。ってこと・・・・??
「その島津君の彼女も人当たりがよくて、親身になって話しを聞いてくれるいい子なんだよな。」
・・・知ってるよ。散々ノロケ話聞かされてたから・・・。
「彼女も、島津君も一緒に働けたら楽しいだろうなあ。って言ってたし。」
もしかして、途中から気がついていたんだ。
俺の恋の相手は、美人な年上の反対隣の女性ではなく、渡辺さんだと言うことを。
わかっていて、静かに見守っていてくれたのかもしれない。
「・・・で、俺たちの関係は知っているんですか?島津は。」
最近は俺の学部が変わってしまったこともあって、すっかり顔を会わせなくなってしまった。
お互いに卒業制作に忙しく、プライベートで連絡を取り合うことも滅多になくなった。
「多分なんとなくは。彼と話をしたのは、最初だけだから。でも、彼女のほうから話してると思うよ?」
「ってことは、彼女さんは知ってるんですかっ!?」
・・ちょっと、それは恥ずかしいかも・・・。
「や、そんなはっきり話したわけじゃないけど、才能にほれ込んだ人間がいて、一緒に独立したいんだけど、同士を探してる。って話をしたときに、お前のことをどんな人間か訊ねられたんだ。
・・・まあ、安定した企業を辞めて、独立する限りは気になるよな。と思って色々話したんだけど・・・。」
ごめんな?って照れ笑いで前置きしてから
「お前の話するのが嬉しくて、ついつい調子に乗ってしまって。」
「・・で?」
なんだか展開が見えてきた気がする・・・。
「『ふふっ。その彼のこと、大好きなんですね。』って見透かされちゃったんだよ。」
怒る??って彼が俺の顔色を伺っているのが可笑しい。
うんと俺より年上で、何でもできて完璧な人なのに。
「・・ばれちゃったものは、仕方ないもんね。それに、みんな知っててくれる。っていうのは気がラクだし。
俺、人見知りだから、全く知らない人間ばかりのところで一からのスタートっていうのも不安があったし。」
「・・・そうだったな。」
島津ぐらい人懐っこくて行動力があれば、もっと早くに貴方に話かけれていたかもしれない。
だけど、俺のこの性格だからこそ、今がある。
運命にみせかけた、必然のヒトツ。
「じゃあ。考えて、くれるか?」
「・・・もちろん。俺も貴方の側でずっといたい。」
密かに彼の会社に就職できないだろうか?と探りを入れようと思っていたところだったのだけれど。
まさか、こんな形で仕事でもプラベーとでも共に生きることになるとは思わなかった。
「恋人としても・・・?」
彼が、まだ俺の顔色を伺っている。
「・・・NO。と言うわけが、ないでしょ??」
彼の左手をとって、薬指にちゅ。とくちづける。
「ずっと、ずっと一緒にいさせてください・・・。」
やっと、ふわ。と安心したように笑った渡辺さんに息もできないぐらい強く抱き締められた。
平行線をたどり、決して交わることのなかった扉は・・・。
今。
永遠に並んで歩む俺たちの決意として、仲良く並んでいる。
さあ。扉を開けて、新しい未来へと歩き出そう。
---------------完-----------------------