まおに、完成した写真集を渡された。

表紙には存在感を示すように、大きく「A」とだけ描いてある。


「・・・これが、お前の出した答えなのか?」
「答え、って・・?」

まおの想いがつまっているようで、ずっしりと重たい。

「Anserなのか。っていう意味。」
「・・・ああ・・。そうとも言えるかもね。新しい第一歩。ってつもりで考えたんだけど。」

決断してもよいものだろうか。と苦しみ続けるまおを見るよりかは、離れ離れになったとしても、自分の信じる未知を歩むほうがいい。と必死に自分に言い聞かせていたあの頃。

すっきりと穏やかな表情を見せるまおを見ても、どこか心は晴れなかった。




今、再び「A」を開く。


「やっぱ、お前いい表情してるよな~~。」
「・・・そうでしょ?なんだか、沖縄ってゆー空気に癒されて、自然体でいられたからかな?」

カメラを首に提げて、自分の感性のままにシャッターを切る。

迷いを断ち切り、自分のために、これからは時間を使う。

穏やかな微笑みの中にも決意が感じられるしなやかな強さ。


まおが芸能界を引退して、穏やかでゆったりとした時間を過ごすうちに、心から送り出してやりたい。と思えるようになった。

どうしてあの頃は、あんなに焦っていたのだろう?と思えるほどに。

まおが芸能界を引退するカウントダウンが始まっていたからだろうか?

俺達の関係は何ひとつ変わらないはずなのに、どこか手の届かない遠くへ行ってしまうような気がしていた。


「・・・大ちゃん、最近すっごく瞳が優しくなった。」
「・・・そうかもな。」

腕の中にまおを閉じ込めて、共に写真集をめくる。

彼の指先がページをめくり、俺の指先が彼の指先を抑える。


ずっしりとした重みがあの頃は負担だったのに、今は頼もしい重みに変わる。


「・・・あと、一ヶ月だな。」
「うん。」

めくられたばかりのカレンダーが8月を示している。

「向こうの天気はどうなんだろうな?」
「・・・そうだね。9月でも日焼け止め必要なのかなあ??」

「真っ黒に日焼けしたお前に戻っても、愛情は変わらないけど。せっかくの美肌がもったいないぞ?」
「やっぱり、日焼け止めと、美白パックは必需品かなあ?」

とん。と頭を俺の胸にもたれさせてくる。


「・・・ねえ。大ちゃん。」
「・・・ん?」

「ずっと、ずっと愛してるからね。」
「・・・知ってる。」

ちゅ。とキスを落としたまおもまた、穏やかな瞳をしていた。




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なんだか最近のダイチャンの穏やかな表情をみていると、こういう二人が浮かんできます。
本当に穏やかな優しい瞳をしていますよね。
引退前後の頃って、本当にやつれていたのでww二人とも。

きっと、今は「A」もこんな気持ちでめくっているんじゃないかなー?と思います^^