「・・・おはよ。」
「・・・おはようございます。」

いつもと変わらない日常が始まる。

肩を並べて駅までの道のりを歩き出す。

「・・・あの。もしかして、暫く留守にしてました?最近会わなかったから・・・。」

会いたくて、会いたくて、どこに行ってしまったんだろう?と毎日気が狂いそうだったけど。
自分一人が振り回されて、貴方のことを嫌いになりそうなぐらいだったけど。

こうやって側にいると、やっぱり好きなんだなあ。と再認識する。


「・・・ああ。ちょっと旅行に行ってたから。」
「・・・そうだったんですか。」

そう言えば、心なしか日に焼けて男らしさが増した気がする。

冬に??
季節はずれのバカンス??
誰と??

出張で、と言ってくれたほうが、心の整理がついたのに。


「もしよかったら、今日の夜部屋においで?お土産買って来たから・・・。」
「わあっ!何ですか??」

「ハワイで有名なチョコレート。」
「わあっ。チョコ大好きです。」

「・・・だと、思った。」

それでも、お誘いを受けると嬉しくて仕方がない。
自分のためにお土産を買ってきてくれたんだと思うと、口元がゆるんでしまう。


「じゃあ。」と駅のホームで振る手も軽やかだ。
だって、帰ってから会う約束をしているのだから。


学校でも、うきうき、にまにまする口元を隠しきれずに
「なんだよ~~。なんかいいことあったのか??」
と島津にあやしまれるけれど、二人だけの秘密にしておきたいから教えてやらない。

「いらっしゃいませ~~!」
今日は、やけにテンション高いなあ?って同じシフトのやつにも勘ぐられるけれど。
バイトの声も弾むってものだ。


うきうきとした気分で一日を終え、彼の部屋のドアを開ける。


香り高いコーヒーの香りと、きらきらと宝石のようにラッピングされたチョコがテーブルの上に並んでいる。


彼がカップを持ってきてくれるのを待って、チョコをつまむ。

日本のものよりも甘く、ナッツがぎっしりと詰まったチョコ。

「いいですね~~。日本はこんなに寒いのに、南国ですもんねっ。」
「そうだな。やっぱり色とりどりの花とか、大自然とかに触れると心が癒されるよな。」

「・・・あ。そういえば、無機質な東京は疲れる、って言ってましたもんね。」

いつだったかの硝子細工の時計の話を思い出す。

「・・・そんな話した?」
「しましたよ。この部屋に初めて来た時。」

「よく覚えてるな。ちょっと感動した。」

じっと彼に見詰められて、視線に耐えきれなくなって下を向いてしまう。

・・・・だって、初めてプライベートな貴方を知れたんだ。
感動したのは、俺のほうだよ。


照れ隠しに何気なくふってしまった話題。


「そういえば、ハワイには何をしに行ったんですか?観光??」

旅行とは聞いていたけれど、もしかしたら社内旅行かもしれないし、気の合う友人と行ったのかもしれない。
・・・まさか、彼女さんってことはないと思うけど・・・。


深く考えずに待ってしまった返事。


「・・・ああ。結婚式で。海外挙式で身内だけでしたんだ。」