毎朝、彼にもらった手袋に手を通すたびに、胸がきゅんと締め付けらる。

嬉しいのに、切ない。

こんなのもらったら、期待しちゃうじゃないか・・・。

たまたまダブっただけの余りモノだから、と言われても、彼からもらったプレゼントであることにかわりはない。
しかも、毎朝見かける彼の手にも同じものがはめられている。


「おはよ。・・・大切に使ってくれてるんだ。」

毎日、あの皮の手袋をはめて出かけるようになった俺の手元を見て、嬉しそうに口元をほころばす。

そりゃあ。大切に・・・。
だって、一生の思い出になるかもしれない大切なタカラモノですから。

ダブったにしても、他の誰かにあげることもできたのに、俺にくれた。
毎朝、寒そうにしていた俺を、気にかけてくれていた。という証拠。

その気持ちが嬉しかった。

でも、それ以上、を望むことができないことが、優しくされた分だけ辛くなる。


駅までの道を、ゆっくり二人で並んで歩く。


最初は、彼の背中を追いかけるように、遅れないように必死だったけれど。
いつの間にか、彼が俺のペースに合せてくれるようになって、肩を並べて歩くようになった。


それだけで、十分じゃないか。


背中を見詰めるだけだった存在が、今は隣にある。


恋人のようにベタベタ触れたり、キスしたりはできないけれど、たまに一緒にごはんを食べて、他愛のない会話をして、彼に憧れて成長できて・・・。


逆方向の電車に乗る彼を見送って、ひらひらと振った両手を、自分に言い聞かせるように強く握り締めた。