次に会うときうに気まずくなりたくないから、必死に笑顔を作って何でもないふりをして扉を閉める。

「じゃあ、御馳走様でした。」
「・・・・君が、持ってきてくれたんだけど?」

「あっ。そうでしたね。・・・でも、なんだかすっかりお邪魔しちゃって。」
「また時間が合えば、また一緒にメシ食おうな?」

いつものように、ふわ。と笑顔を作ってくれるけれど、瞳が何かを秘めている。
俺に言えないなにか??
それとも、本心は別のところにある??

「また・・・。」と言ってくれたけれど、それを鵜呑みにしてもよいものだろうか?
もしかしたら、部屋に押しかけるのは負担になっているのではないだろうか・・・。


パタン。とドアを閉まるドアを見詰め、二人の間にある壁を感じる。


こんなに近くにいるのに。
こんなにも遠い存在・・・。


渡辺さんの部屋のドアにもたれて、ずるずるとそのまま座り込む。


「アイタイよ・・・。帰りたくない・・・。もっと側にいたい・・・。」


背中にあるドアを開ければ、すぐに会えるのに。
ただのお隣さんな俺は、帰らなければならない。

トクベツな存在にはなれない・・・。


カレーの鍋を抱えながら、努力すればするほど空しいこともあるんだ。と知った。

知れば知るほど恋に落ちてしまう。惹かれてしまう。手に入れたい。愛されたい、と望んでしまう・・・。


「・・・どうすれば、いいんだよ・・・。」


前にすすむことも、後戻りすることもできない。
ただただ胸を締め付けるようなこの気持ちを受け止めるしかない。


ブルブルっ。と携帯が震えて着信メールを知らせる。


「・・・なんだよ。こんな時に・・・。」


画面を開けば、満面の笑みで可愛い女の子とツーショで映っている島津のシャメが送られてきていた。


>今日は課題なくてラッキイだったよなーっ。俺は有意義に合コンに参加だよーん。


「・・・空気読めよ。馬鹿・・・。」


いつもは島津の明るさに救われるけど、今日は無性に腹立たしかった。