「ちょっと作りすぎちゃったかなー・・・。」

玉ねぎが安かったから、ついついたくさん買い込んじゃって、でも俺に作れるレシピなんて限られてるから、結局全てカレーに変身した。

「でも、夏場って次の日には食べきらないと駄目だからね。ってお母さん言ってたしなー・・・。」

カレーは大好きだけど、一人で食べきる量じゃない。

家で手伝いしていたときは、食べ盛りの俺を含めた4人分とか作ってたからイマイチ分量がわからなくて、できあがった量をみてびっくりした。


「・・・この間、パスタをご馳走してもらったお返し。って言ったら不自然じゃないかなあ・・・。」

キッチンで、鍋をかき混ぜながら隣に繋がる壁をちらり、と見る。

この壁の向こうで、つい数日前、渡辺さんが俺のために料理を作ってくれた。
・・・あ。いや、ついでに、なんだけどね。本当は。


ぐっと距離が縮まった気はしたけれど、用事もなく訪ねるほどの親密度ではない。
だって、あれはあくまでも緊急事態だったんだから。

彼の部屋を訪ねるために、何か理由が欲しい。


「・・・いいよね?一人暮らしに共通の悩み。だもんね。」


自分に言い聞かせて、鍋ごともって彼の部屋のインターフォンを押す。

すぐに応答がなく、もしかしたらまだ帰ってないのかも。って不安になった頃にドアが開く。


「あっ!!こんばんわっ。カレーっ。作りすぎちゃってっ!!この前のお返しってゆーか・・・。」

頭の中で、どんなふうに話そう。って散々シュミレーションしてきたはずなのに、彼を目の前にすると上手く言葉がでてこなくてしどろもどろになってしまう。

最初は俺を驚いたように目を見開いていた渡辺さんが、一生懸命に話す俺の言葉をゆっくりと待っていてくれる。


「・・・濱尾だったんだ。カレーのいいにおいがしてて、俺も食べたいなー・・・。って思ってたところだよ。」
「・・・あっ。でも、俺料理とか得意じゃなくてっ。美味しいかどうかわからないんですけどっ。」


それでも貴方と話したい一心で、持ってきてしまいました。


「・・・香りは合格だけどな?・・・それに、メシは一人で食べるよりも二人で食べるほうがうまいしな。」

にっこり。と微笑んで部屋に入るように促してくれる。


よかった。


本当は、おすそ分け。って容器に移し替えて分けるのが普通だろうとは思ったけれど、どうしても一緒に食べたくて鍋ごと持ってきた甲斐があった。


「今日は暑いよなーっ。乾杯する?」

テーブルにコトリ。と鍋を置くと、彼が冷蔵庫からビールの缶を取り出す。

「あっ。いいですね~~。」

と、答えてしまってから、自分が未成年だったことに気がつく。


「あ・・・。でも、俺、まだ19歳なんですよね・・・。」

しかも、19歳になったばかりです。


「あははっ。聞かなかったことにしとくよ。」

ぷしゅ。とプルトップを開けて、缶を渡してくれる。


開けちゃったもんね・・・。
断れないよね・・・・。


部屋に彼と二人っきりで、乾杯する。