「何にやけてるんだよっ。濱尾っ!!」

教室の机に座って、昨日のことを思い出していると、後ろからぽんっ!!と肩を叩かれる。
この声は、最近新密度がぐっと増した島津だ。

「なんか、いいことあった??もしかして、例の件で進展あったとか。」
「ん~~。進展ってほどじゃないんだけど、昨日急に風呂がぶっ壊れてさあ。お前に連絡しようとしたら、たまたまあの人に偶然あって、風呂貸してくれた。」

「ひょえええ。何っ!?その急展開っ!?で?で?どこまでいったの?」
「どこまでも何も・・・。ただ単に親切で風呂貸してくれたんだもん。フツーに風呂入ってちょこっと話しただけだよ。」

なあんだあ・・・。と明らかにがっかりされるけれど、そうそうドラマのように上手くはいかないよ。

「・・・まっ。でも、進歩だよなーっ。話できただけでも、ただのお隣さんから、少なくとも知り合いには昇格だもんな。」
「・・・そうだね。」

知り合いに昇格。か。

昨日一緒に過ごした2時間で色んな話をして、知り合い。よりももっと距離が近づいた気がする。


「ななっ。知り合いに昇格した記念に、今日はぱーっと飲みにいかね?」
「・・・・今日もバイトが入ってるから、パス。ってゆーか、お前もまだ未成年だろーっ。」

「いいじゃん。大学に入ったら、飲酒のオッケーでたようなもんだろ?」
「そうかもしれないけど。・・・もし、お店でなんかあったら、問題だろ?おとなしく家呑みしてろよ。」

「つまんないなーっ。あーっ。一緒に飲みに行く彼女ほしーっ!!」

切実に叫ぶ島津を眺めながら、

「だから、相手の問題じゃなくて、年齢の問題なんだって・・・。」


おれだって、家では親父に付き合って晩酌をしたりしていたのだから、呑めないわけではない。
もちろん、バイトがない日ならば付き合うことだってできる。

でも、やっぱり親元離れて生活させてもらっている限りは自分の行動に責任もたなきゃな。と思うのだ。


島津のように自由な生き方に、憧れるときもある。


今していることが将来の仕事に繋がるのか?
自分に才能はあるのか?
認めてもらえるのか??

そんなことばかりを考えているおれと違って、毎日自分のしたいことができて、楽しい。
彼女作って、楽しいキャンパスライフを謳歌するんだーっ!!

って宣言している彼の生き方に・・・。



でも、今自分にできることを精一杯していれば、いつか認めてもらえる日がきっとくる。

昨日、渡辺さんと話していて、そんなふうに感じることができたんだ。


自己肯定感。ってなかなか説明されてもてるものではない。

自然に、がんばろう。って思えるようになったから、バイトも課題も真面目にしたいんだ。