何かが起こるわけでもないのに、どうして好きな人がシャワーを浴びている、と思うだけでこんなにドキドキするのだろう。

ましてや渡辺さんは男の人で。
自分なんて、きっと渡辺さんから見たら青臭いガキで。
自立したい。って家を出てきてたって結局親の庇護下でしか生きていけない未成年で。

どう考えたって釣り合わないのに。


本気の本気で恋なんだ。と気がついてしまったら最後、この気持ちを無視することはできない。

友人でもいいから側にいたい。と思う。

一刻も早く大人になりたい。
対等に話せるようになりたい。

毎日見詰め続けるだけだった背中に追いついて、並んで歩いてみたい。


願わくば、その背中を抱き締めて、抱き締められたい。




「お待たせ。」

ぐるぐると思考を巡らせていると、濡れた頭をタオルで拭きながらバスルームから渡辺さんが出てきた。

わ。色っぽい・・・・。

スーツをぴしっと着こなしている渡辺さんもストイックな色気があるのだけれど、こうやってラフなスエット姿で乱れた髪の毛が湿っている感じも・・・・なんというか・・・誘われる色気。というのだろうか。

きっと、女の子が見たら、頬を染めて直視できないんじゃないろうだうか。って思うような色気。


でも、俺は同性だからか。

むしろ視線を外すことすらも忘れてじいいっと見とれてしまった。