お風呂からあがってくると、大ちゃんが枕を抱えて気持ちよさそうに眠っていた。
今日は珍しく先に寝ちゃったんだ・・・。
ジム頑張りすぎたのかな??


ちゅ。と額にキスを落とすけれど、わずかに睫毛を震わせるだけで起きる気配はない。

・・・つまんないの。
なんだか、今日は目が冴えているというのに。



窓から明るい月明かりが差し込む。

テーブルに落ちた月明かりを眺めていると、なんだか今日はブランデーをロックで飲みたい気分になった。

カラン。カラン。とクラッシュした氷をグラスに入れる。
静かに深い琥珀色のブランデーを注ぎいれると、カラン。と氷が鳴った。


ゆっくりとグラスに口をつける。

喉を通ってゆく冷たい液体。


アルコールには強いほうだから、これぐらいで酔ったりはしないけれど、ブランデーを一口・二口。と含むたびにすやすやと眠っている大ちゃんにもどかしさを感じる。

「どうして、してほしいときにこんな安らかな顔して眠ってるかなあ・・・。」

でも、大ちゃんが僕にするみたいに起きるまでキス攻撃っ!!とか。
のしかかって、ゆさゆさ揺さぶり起こして「かまって~~。」と言う勇気もなくて。


口の中でゆっくりと溶けてゆく氷を舌先で転がしているうちに、自分の中の雄が目覚めた。



ベッドに手を突くと、ゆっくりと大ちゃんの唇に、自分の唇を押し当てる。

舌先で冷たい氷を押し入れると、大ちゃんの喉が僅かにゴクリ。と動いた。



「・・・・まっ・・・おっ・・・??」


びっくりしたように目を見開いた大ちゃんの瞳が、僕の瞳を捕らえた瞬間に欲望の色を帯びる。

一気に体勢を逆転され、シーツに縫い付けられ、噛み付くようなキスをされる。

真っ白い天井が見え、今から愛されるんだ。と、実感する。


ひんやりと冷たい大ちゃんの舌先と、僕の舌先が絡みつく。

何度も絡めあい、少し離れてから僕の感情を確かめるように口腔内をぐるり。と一周してふたたび絡みつく。
ちゅ。くちゅ。ちゅ。
と何度も音を立てて、触れては離れてゆく唇。

少しずつ混ざり合う体温・・・。

切なげに眉を寄せた大ちゃんが、唇を離れてすうっと喉のラインに降りてゆく。


ふわ。とやわらかいのに僅かに冷たい唇が、先程までキスをリアルに思い出させる。


「だいちゃ・・・。」


ぎゅと後頭部を引き寄せて、耳元にささやけば、「まっ・・・おっ・・・。」と乱れた息で僕の耳元にもささやき返してくれる。


「愛してるっ・・・よっ・・。」

その安らかな眠りを奪ってまで触れてほしい。と願ってしまうほどに。


「俺もっ・・・。まっ・・おっ・・・。」

大ちゃんの瞳がいつもの包み込むような優しさではなくて、僕を欲して濡れている。


そう。もっと、もっと僕に溺れて。
逃げられないぐらい虜になって・・・・。


その瞳の光を確認して・・・。

安心して、大ちゃんの与えてくれる愛情に身を任せた。







情熱を解放しきって、熱の上がった体温を新しい氷の入ったグラスで冷やす。

中身はブランデーではなくて、大ちゃん仕様のミネラルウォーター。

「はい。大ちゃんの分。」
「サンキュ。」

熱をつけたのは、僕。
答えてくれたのは、貴方。


くったり。とまだシーツに沈んでいる大ちゃんの背中をそっと撫でる。

すっかり目が覚めてしまった大ちゃんに、「起こしてごめんね。」と言いながらグラスを渡す。


「お前、キス上手くなたよな~~。」
「・・・え?そう??」

「そうだよ。なんだよ。あのエロいキス。一気に目が覚めただろっ。」
「・・・そうだとしたら、先生が優秀だからね。」

ちゅ。と大ちゃんの唇にキスを落とす。


「全部、大ちゃんが教えてくれたんでしょ?大ちゃんが愛してくれるからだよ・・・。」


そう。

いつもきちんと返事をくれる大ちゃん。


期待を裏切らない男。とでも言うのだろうか??


未だに「幻滅した。」って思ったことがないぐらい、いつでもカッコいい大ちゃん。



「ね・・・。もっと、もっと好きになってよ・・・。」
「言われなくても・・・。」

ぎゅっと、首の後ろに腕を回すと、随分と温かくなった唇がふたたび降りてきた。