「今日は観れそうにないね。天の川。」
「そうだなあ・・・。台風が近づいてるらしいし。」

どんよりと曇った空を見上げながらまおがつぶやく。

買い物帰りに「どうぞ。」と配られた小さい笹の木に、願い事を書いて結びつける。

小さなきらきらと光るビーズや、星細工が風に揺れる。


「風はイイ感じなんだけどね。」

少し湿ってはいるけれど、気温が上がっていないせいで、7月だというのにひんやりとさえ感じる風が吹き抜ける。


「これって、天の川見えないと願い事叶わないのかなあ・・・。」
「さあ。関係ねーんじゃねー?だって、地上から見えないだけで、天の川は存在してるんだから。」

「・・・そっか・・。そうだねっ!!」

憂鬱そうに空を見上げていたまおが、ぱあっ。と笑顔になる。

「じゃあねーっ。来年も再来年もこうやって、大ちゃんの隣で七夕を過ごせますように。」
「そうだな。来年・・・。もっとでっかい男になって、まおの側にいれますように。だな。」

「あっ。あと、デザインのお仕事で成功しますように・・・。は、いっか。」
「・・・どうして?」

願い事を書いた短冊をまおがくしゃり。と丸める。

「だって、それはお願いするものじゃなくて、自分で叶えるものだもん。」
「・・・そうだな。」

ああ。そうなんだ。

だから、来年も愛し合えますように。じゃないんだな。
側にいれますように。だけでちょっと物足りないなーっ。って思ったけど。

愛し合うのは、自分の意思。だもんな。


「でも、せっかくの七夕なのに、やっぱり星空が見えなくて、残念だねーっ。」
「・・・せっかくだから、誰にも見られずに、二人っきりで過ごせていいんじゃないか?」

ん??と、まおが小首を傾げる。

「分厚い雲でさえぎられて、誰にも邪魔されずに逢瀬を楽しめるだろ?」
「・・・あ、そっかあ・・・。よかったねっ!!曇りで。」

ふふふっ。と笑うまおがあまりにもかわいくて。


「じゃあ、俺たちも邪魔が入らないとゆーことでっ!!」

がばっと。シーツをまくって、まおごと包み込む。

「ほら。これで誰からも見えない。」
「こんなことしなくても、誰もいないじゃん。」

シーツに包まれた二人だけの世界の中で、まおがクスクスと笑う。

「・・・でも、なんかいいね。二人だけの秘密。って気がする。」

シーツが蛍光灯の光を和らげ、優しい空間を作り上げる。

クスクスとじゃれあいながら、キスを交わし洋服を脱がしあう。


「・・・・ねえ。今頃織姫と彦星もデートしてるかな?」
「1年ぶりだからな。そりゃあ、激しいだろうよ。」

「もーっ。そんなムードないこと言わないのっ!!」

ぺしっ!とまおが俺を叩こうとするけれど、シーツが絡まって届かない。

「俺たちも、負けないようにアツイ夜にしようぜ。まお。」
「あっ・・・。んっ・・・。」

喉元に噛み付くようにキスを落とすと、弧を描いてのけぞる。

「まお・・。まお・・・。一年に一回だろうが、二年に一回だろうが、俺はずっとお前を待ち続けるからな・・・。」
「ん・・・。ん・・。だいちゃっ・・・。」

シーツが絡まって、酸素が薄くて苦しいのか、胸が苦しいのかわからない。

気の遠くなるような星星が、俺たちの間に立ちはだかろうとも。


きっと俺はお前にたどり着く。


だから、お前も必ず帰ってこい。


いつまでも、いつまでも愛してるよ。


まお。