並んだ扉は僕たちの心

「おはようございます。」
「あ。おはようございます。」

今年の春、美大に合格して一人暮らしを始めた。
実家も東京都内ではあるのだけれど、自立したかったのと、大学の課題に専念したり、バイトをしたりしてみたかったため、無理を言って家を出た。

家賃は親持ち。で自立と言うのはほど遠かったけど、家にいたら当たり前のように出てくる食事も、洗濯機に放り込んでいれば、きちんんと畳まれて引き出しに入っている洗濯モノも。

やっぱ、一人暮らしをしてみないとわからないありがたみ。というものを感じていた。


課題・バイト・家事の毎日で、毎日が慌しく過ぎてゆく。


そんな毎日の中での、癒し。と言うべきか？


毎日出かける時間が同じらしく、玄関の扉を開けるとお隣さんもタイミングよくドアを開けることが多くって。

なんだか気恥ずかしくて戸惑っていると、小さく会釈をしてにっこり笑って

「おはようございます。」って声を掛けてくれたんだ。


新しい環境に慣れようといっぱいいっぱいだったおれにとっては、まさに癒し。の笑顔だったんだ。